平面度を上げても均一加圧できない ナノインプリント金型設計をCAEで追い込む冴えない機械の救いかた(4)(4/6 ページ)

» 2026年05月14日 07時00分 公開

CAE解析でのポイント

 筆者がこの仕事に取り掛かったのは、図9の試行錯誤による改善結果の、一番右側の圧力分布となった後です。一番右側の圧力分布は、仕事の依頼主と金型専業メーカーによる成果物でした。

 CAE解析に戻りましょう。当時のWindows OSは32bitでした。実装メモリは2GBで、その多くをWindowsとAnsysが使っていました。計算できる節点数の上限は40万節点くらいだったと記憶しています。しかも、接触要素を使った非線形解析です。図10のモデルだとギリギリ計算できるでしょう。ということは、図11で示した「1回の試行錯誤にかかる時間」が長過ぎるのです。ちなみに、当時は「Ansys Workbench」ではなく、昔からある「Ansys Mechanical APDL」を使っていました。

 試行錯誤に要する時間を短縮するためには、計算がすぐ終わる方法を使わなければなりません。このような場合は、軸対称要素を使います。

 図8のような問題を解決した後の圧力分布は回転対称となり、図12のようになりました。ここで、直交座標(後の説明のため縦軸をz軸としました)ではなく、円筒座標系を使います。半径はr、角度はθで表現します。圧力はどのθ位置でも同じ値なので、圧力は半径rだけの関数となります。

円筒座標系で表した圧力分布 図12 円筒座標系で表した圧力分布[クリックで拡大]

 図13に要素分割図を示します。ダイセットまで含めて解析しましたが、説明のために金型、スタンパ、ワークの要素のみ描いています。

要素分割図:軸対称要素(円筒座標系) 図13 要素分割図:軸対称要素(円筒座標系)[クリックで拡大]

 3D CADに付属したCAE解析ソフトを使われている読者がほとんどだと思いますので、ここで使った軸対称要素を説明しますね。

 図14に軸対称要素を示します。圧力はどのθ位置でも同じ値として扱うので、θ方向の要素分割はなく、解析対象を小さなリングに分割したものと考えてください。

軸対称要素の説明 図14 軸対称要素の説明[クリックで拡大]

 実物は3次元物体ですが、分割した小さなリングの断面を考えます。断面なので2次元ですね。その断面が軸対称要素です。3次元問題なのですが、計算は2次元問題となります。

 図14の場合、小さなリングは121個です。要素数は121個、節点数は1000個以下でしょう。

 3次元問題として円周方向に100分割すると、要素数と節点数はその100倍になります。そして、図10のように四面体要素で分割すると、要素数と節点数はさらにその数倍となります。

 今回のケースでは、ダイセットとプレス機との接合部(図示していません)まで含めて解析したのですが、軸対称要素の節点数は1万個程度となりました。32bitのWindowsマシンでも十分計算でき、接触要素(これは線要素となり1次元要素です)があるので非線形解析にはなりましたが、計算時間は数十秒でした。要するに、図11で説明したループの試行錯誤に要する時間が数十秒だったということです。

 Ansys Workbenchでも軸対称問題は扱えますが、注意点があります。それは「3次元モデルはサーフェイスモデルであること」「サーフェイスモデルの全ての頂点のz座標がゼロであること」「y軸が回転軸であること」です。

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