マツダは2026年3月期の連結決算を発表。米国関税コストの影響を大きく受けたが、構造改革が奏功し純利益は市場予測を上回った。2027年3月期は新型「CX-5」を起爆剤にV字回復を見込む一方、電動化投資は1.2兆円へ縮小する。
マツダは2026年5月12日、広島県府中町の本社とオンラインで会見を開き、2026年3月期(2025年度)の連結決算と2027年3月期の業績見通しについて説明した。
2026年3月期の売上高は、4兆9181億円(前期比2%減)、営業利益が515億円(同72.3%減)、経常利益が1318億円(同30.2%)、純利益が350億円(同69.2%)だった。前期比では大幅な減益となったが、純利益はQUICKコンセンサス(アナリスト予想平均)の179億円を上回った。この決算内容が市場で評価され、株価は一時前日比150円高の1144円まで上昇し、ストップ高水準を記録した。
2026年3月期の前半は、米国関税の引き上げや、それに伴うメキシコ製の「MAZDA CX-30」の生産抑制、販売台数の減少などが響き、記録的な営業損失を計上した。しかし、下半期にかけては継続的なコスト削減の取り組みや、1台当たりの収益性の向上により、逆風下でも業績回復を果たし、結果として事業基盤を強化する形となった。
マツダ 代表取締役社長 兼 CEOの毛籠勝弘氏は、回復要因について次のように語った。
「何よりも、現場や取引先が一丸となって固定費の削減や原価低減をやり遂げてくれたことが大きく、本当に頭が下がる思いだ。市場の現実を見据え、身の丈に合った『マルチソリューション戦略』や『ライトアセット戦略』を愚直に進めてきた。結果的に、約1500億円の関税影響を吸収し、やっと黒字を確保できた。ここからが事業改革の本番だ」(毛籠氏)
なお、2026年3月期の連結出荷台数は、不透明な経済情勢や関税影響に伴う生産抑制などが影響し、前期比6%減の114万7000台にとどまった。
2027年3月期の業績見通しについては、売上高が5兆5000億円(前期比11.8%増)、営業利益が1500億円(同2.9倍)、純利益が900億円(同2.6倍)と、増収増益を見込む。
業績の回復をけん引するのは、欧州などで好調な立ち上がりを見せる新型「CX-5」のグローバル展開と、米国市場における「CX-90」などラージ商品群を通じた販売網の確立だ。グローバル販売台数は前期から約10万台増の132万台を見込んでいる。中東情勢の影響などによる原材料や物流費の高騰リスクをマイナス要因として織り込みつつも、売上増や継続的なコスト構造改革によって打ち返す構えだ。
マツダが中期経営計画で定めた2025〜2027年の「フェーズ2」期間では、構造的な原価低減で1000億円、固定費の効率化で1000億円の収益改善を目指している。すでに部品調達など取引先との共創による原価低減を推し進めており、約8割の領域で、平時からサプライチェーン再構築と競争力強化を進めているという。フェーズ2期間内に営業利益率で4%相当の改善を実現し、米国の関税引き上げといった外部要因のマイナスを完全に吸収できる収益構造を目指す。
マツダは決算概要と併せて、電動化に伴う投資計画の抜本的な見直しも発表した。2030年までの電動化投資総額について、2022年の公表時(1.5兆円)からインフレ影響を踏まえて2兆円規模に膨らむと想定されていたが、これを1.2兆円へと大縮小する。
毛籠氏はその背景について、「自動車産業は電動化への移行に加え、地政学リスクや経済安全保障など、極めて不確実性の高い環境にある。当社のようなスモールプレイヤーとしては、ハイブリッド車やガソリン車も含めた『マルチソリューション』を提供し、将来の選択肢を持ち続けることが合理的だと判断した」と説明。今回の見直しについては「単なる削減ではなく、戦略に基づく『選択と集中』である」と強調した。
具体的には、自社製EV(電気自動車)プログラムを徹底的にスリム化する。電池必要量の見直しの他、電動駆動ユニットやモーターにおける自前主義からの転換を図る。また、100%自社開発となるEVの市場投入時期についても、当初計画(2027年初頭)から2年ほど後ろ倒しし、2029年頃に1車種を導入する計画へと絞り込んだ。
その一方で、中国の長安汽車との共同開発車に対しては投資を拡大し、合計4車種の電動車を開発する。電動化の進展が早い欧州やASEAN、豪州などの市場に対しては、中国工場で生産したこの共同開発車を輸出し、特定の地域市場の適合性に応じてスピーディーに展開していく方針だ。
生産面においては、「ライトアセット戦略」により、モデルベース開発や、変種変量に対応できる独自のフレキシブル生産システムを活用することで、投資を抑えながら効率的に電動化へ対応する。これにより、2030年時点ではグローバル販売の約15%に当たる20万〜25万台の電動車をカバーできる体制を構築する。EV一本に絞るのではなく、市場ごとの現実的なインフラやニーズに合わせてハイブリッド車やガソリン車を柔軟に組み合わせる、マルチソリューションを提供し続ける考えだ。
一方、約950億円を投資して山口県岩国市に新設するEV向け車載電池の関連工場について、毛籠氏は「計画通りに着工しており、立ち上げにおける品質確認を着実に進めている」と進捗を説明した。その上で、「将来的に電動化の波が本格的に拡大した際には、マツダの電動化を支える重要なハブ拠点として位置付けていく」と展望を語った。
毛籠氏会見の最後に、「マツダは数を頼りに規模で勝つ会社ではない、『選ばれる理由』で勝つ会社であるべきだ」と述べ、資本効率を高めながら独自価値を磨き続ける方針を示した。
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