KyoHAのヒューマノイド開発は、構成部品の全てを「国産品」とすることを最大のトピックとしている。
現在、世界のヒューマノイド開発の現場では、スイス製やドイツ製、あるいは安価で高性能な中国製のモーターが標準となりつつある。しかし、KyoHAは、検証機であるSEIMEIの開発において、あえて「純国産」のモーターの採用にこだわった。
マブチモーターの協力により採用された国産モーターについて、橋本氏は「実際に触れて制御してみると、欧米製や中国製と比較しても非常に信頼性が高く、制御がしっかり効く感触を得ている」と説明する。
これまで日本のヒューマノイド開発者が海外製部品に頼らざるを得なかった現状を打破し、国内のサプライチェーンを再構築する第一歩が、ここに示された。
発表会の中盤、会場を驚かせたのは、ベールを脱いだSEIMEIの姿だけではなかった。
当初予定されていた歩行などの動的なデモンストレーションが、急きょ中止となったのである。KyoHA事務局の佐々木啓文氏(SREホールディングス)は、「直前に『弁慶の泣き所』を痛めてしまい、予定していた動きを控えることになった」と、故障の事実を包み隠さず報告した。
公開準備中に、足首のリンクのパーツが破損したという。しかし、これこそがKyoHAが掲げる「ノートラブルシューティング、ノーエンジニアリング(トラブルなくしてエンジニアリングはない)」という精神の体現だろう。
不具合を恐れて公開を遅らせるのではなく、未完成であっても現状をさらけ出し、そこから得られた知見を次へ生かす。
会場では外装を外して内部構造を公開する解説が行われ、フレームレスモーターの組み込みや、住友重機械工業製の減速機、3Dプリンタを多用した腕部などがあらわになった。
なお、SEIMEIの仕様は以下の通りだ。
ハードウェアの進化と並行して、KyoHAが注力しているのが「フィジカルAI」の実装だ。橋本氏は、昨今のAI(人工知能)がテキストベースの学習から、実世界での「行動データ」を用いた学習に移行しつつある現状を指摘した。
KyoHAにおけるヒューマノイド開発では、VAM(動画行動モデル)と呼ばれる、動画から行動を学習する手法を取り入れている。例えば、人間が自動車に乗り降りする動画を撮影し、その特徴量を抽出して深層強化学習に組み込むことで、ロボットに環境との「接触」を伴う複雑な運動を可能にするAIモデルを生成させる。
「米中の後追いではなく、限られたデータでも効率的にAIモデルを学習させられるアプローチが必要だ」(橋本氏)。検証機のSEIMEIは、まさにこのフィジカルAI技術を「現実世界で走らせるための器」としての役割を担う。
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