「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第14回は、既存のRORO船に自動運航機能をレトロフィットで追加した「第二ほくれん丸」の操舵室の構成や、導入された自動運航システムの構成などについて解説する。
2026年3月6日、日本財団の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」に参画する内航RORO船(貨物を積んだトラックやトレーラーが自走して乗り降りできる船)「第二ほくれん丸」の関係者向け説明会と操舵室公開が、北海道釧路市内および釧路港で開かれた。
第二ほくれん丸は、RORO船として日本で初めて、日本海事協会(ClassNK)の自動運航船に関する船級認証を2026年1月27日付で取得し、その後同年2月9日付で国土交通省の自動運航船としての船舶検査に合格した。これにより、営業航海中に一定条件下で“自動運転レベル4相当”の自動運航機能を使用できるようになった。
川崎近海汽船が運航する内航RORO船「第二ほくれん丸」。2016年9月に内海造船で建造され、総トン数1万1413トン、航海速力22.6ノット。12mシャシー160台、乗用車88台を積載できる[クリックで拡大]
ブリッジ前方に設置されたカメラ。第二ほくれん丸では、レーダーやAISで得られる情報を補うため、前方の定められた範囲をAIカメラで監視する。小型船などの検知は気象/海象条件にも左右される[クリックで拡大]同船は、北海道の釧路市と茨城県の日立市を結ぶ定期内航RORO船で、全長173.08m、総トン数1万1413トン。12mシャシー160台、乗用車88台を積載し、生乳などの北海道産農産物や一般貨物の輸送に従事している。MEGURI2040第2ステージにおいては、参加する4隻の中で最も大型で、かつ既存大型内航RORO船に自動運航機能を追加するレトロフィットによる実証船という位置付けになる。
日本財団 常務理事の海野光行氏は、これまでのMEGURI2040関連の説明会と同様に、自動運航船の開発に取り組む背景として、内航海運において人口減少、50歳以上の船員が半数を超えるといった高齢化、海難事故の8割がヒューマンエラー起因であることなどを挙げている。加えて、技術開発だけでなく、法整備や保険などの制度整備、さらには社会的理解の醸成も含めて取り組みを進める必要があるとして、造船、海運、舶用機器、AI(人工知能)、通信など53社が参加する「オールジャパン」体制の必要性を訴えた。
第二ほくれん丸は、MEGURI2040の自動運航船として、旅客船「おりんぴあ どりーむ せと」、新造内航コンテナ船「げんぶ」に続く報道公開となった。釧路−日立を結ぶ太平洋側の航路で、漁船の多い海域や濃霧海域を含む航路で商用に供する自動運航船の実証を目指す船であるとともに、既存船への後付け実装により、実航路で自動運航機能を運用する点が、この船の特徴である。
川崎汽船 海洋技術グループ船舶技術チーム チーム長の山田元氏は、自動運航システムについて「従来は乗組員が担ってきた認知/判断/操船の一部をシステム化したものだ」と説明した。第二ほくれん丸の自動運航システムは「センサー」「プランナー」「操船システム」「陸上支援」の4層で構成されており、センサーが状況認識を担い、プランナーが避航ルートを提案し、操船系がそのルートに沿って船を動かし、陸上支援が遠隔監視や支援を行う。
なお、説明会や操舵室での質疑では、現時点で自動運航技術は船員数を減らすことを目的としていないとの回答があった。導入前後で船員数は変えておらず、自動運航モードに入っても当直員の人数や立ち位置は基本的に変わらないという。あくまでも自動運航システムは複数の航海関連情報を統合して、当直員による判断作業の一部をシステムが支援することで、他船や周囲状況の監視、危険回避の判断に意識を向けやすくなる点を挙げている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
モビリティの記事ランキング
コーナーリンク