今回は、旭化成は2026年4月15日に開催した「中期経営計画2027〜Trailblaze Together〜」の説明会で語られた中東情勢悪化の影響についてつらつら語っています。
中東情勢の悪化が日本の製造業に影響を与えています。2026年2月末以降、米国およびイスラエルとイランの紛争の激化により、石油化学産業の主原料であるナフサの価格が急騰しています。
旭化成が2026年4月15日に開催した「中期経営計画2027〜Trailblaze Together〜」の説明会で、この地政学リスクが自社の化学事業、さらには子会社の旭化成ホームズが展開する戸建注文住宅「ヘーベルハウス」に及ぼす影響について言及しました。
既に化学事業への影響は記事化しておりますので、今回は旭化成の住宅事業への影響について紹介します。
「ナフサ価格の値上がりは従来比で5〜10%増というレベルではなく2倍近くになっており、顧客にもサプライチェーンがどのようになっているかということをきめ細かく説明しながら、必要な場合は値上げをお願いしている」。旭化成 代表取締役社長 兼 社長執行役員の工藤幸四郎氏が今回の説明会で語ったこの言葉は、中東情勢悪化の影響を示しました。
日本の化学産業は使用するナフサのうち40%を中東から、20%を中東以外の海外から輸入しており、残りの40%を国内から調達しています。
工藤氏は「現在は中東からのナフサの仕入れがほぼない状況です。そのため、米国、中南米、アフリカ、中央アジアなど、さまざまな国からのナフサ調達に向けて取り組みを進めている」と調達ルートの多角化を推進していることを明かしました。
ナフサは、ナフサクラッカーと呼ばれる巨大な熱分解プラントにおいて、約800〜900℃の高温で分解され、エチレンやプロピレンなどの石油化学基礎製品(エッセンシャルケミカル)へと生まれ変わります。これがプラスチック製品や化学繊維、塗料、建材などの材料となります。
今回のサプライチェーンの危機は、化学業界の中だけにとどまらないそうです。旭化成グループは、ナフサクラッカーの操業から、石油化学基礎製品を活用した住宅事業まで展開しています。住宅事業で懸念されているのが、ナフサから生産される「トルエン」や「キシレン」の調達難です。これらは塗料や接着剤、建材などの製造に必要な溶剤であり、住宅建築のあらゆるプロセスで使用されます。
工藤氏は「今の段階で、子会社の旭化成ホームズが展開する戸建注文住宅『ヘーベルハウス』のビジネスそのものに(工事が止まるなどの)直接的な影響が出ているという事実はつかんでいない」と前置きしつつも、「受注を制限する必要性は感じていないが、サプライヤーとのコミュニケーションを今まで以上に密にする必要がある」と警戒感を強めています。
住宅事業において最も懸念されるのは、各種部材の仕入れコストの上昇です。ナフサ由来の化学建材だけでなく、物流費や労務費の高騰も重なり、住宅の原価がアップする可能性があります。旭化成は、このコスト増をどこまで吸収できるか、あるいは最終価格に転嫁せざるを得ないのか、厳しい判断が迫られています。
この問題の打開策の1つとして、工藤氏は「付加価値の高いハイエンドな住宅ビジネスへのシフトについて検討する必要がある」と述べています。
今後旭化成のように、中東情勢の悪化を契機に、多様な事業の戦略転換を行う化学メーカーや素材メーカー、住宅メーカーなどが増えると見ています。
旭化成が新中計で営業利益目標2700億円を策定 トランプ関税の影響とは?
旭化成の素材戦略、次世代半導体のパッケージ材料や水電解システムに重点投資
豊田通商、旭化成のLIB用セパレータの生産供給能力一部を確保
旭化成 北米でリチウムイオン電池用湿式セパレータの工場建設を開始
旭化成が感光性絶縁材料の生産能力増強、需要急増する先端半導体市場で攻勢Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
素材/化学の記事ランキング
コーナーリンク