10個のベアリングについて寿命試験を行いました。その結果を表1に示します。
| 累積故障数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 故障までの時間 | 110 | 160 | 180 | 200 | 210 | 250 | 300 | 320 | 350 | 400 |
| 平均ランク値 | 0.090 | 0.182 | 0.273 | 0.364 | 0.455 | 0.545 | 0.636 | 0.727 | 0.818 | 0.909 |
| 表1 ワイブル解析サンプル例 ※平均ランク値は故障順位を基に累積故障確率を求める方法であり、本稿では簡易的にr/(n+1)を用いています(r:累積故障数、n:データ数) | ||||||||||
(1)故障の原因を推測
表示された数式が、y=2.4384x−13.764となっている場合、図2の近似直線の傾きから、形状パラメータβ=2.4384>1であることが分かります。
このことから、摩耗故障期にあると推測できます。つまり、使用時間が長くなるほど壊れやすくなる、劣化が原因の故障であることを示しています。
(2)交換時期を予測
ワイブル解析では、累積故障確率が約63.2%となる時点を寿命の目安とします。このとき、計算上のyの値は0になります。
したがって、0=2.4384x−13.764を解くと、x=5.645となります。ただし、ワイブル解析では時間が対数で示されているため、この値をそのまま時間として扱うことはできません。そこで、対数を元に戻すために指数関数を用いると、e^5.645≒282.9時間となります。
(3)評価
摩耗故障が支配的であり、その約60%がおよそ280時間で故障すると考えられる場合、そのままでは実用上問題があります。実際の運用では、その前に交換する必要があります。例えば、この半分の約140時間で交換するというプランが考えられます。
今回のサンプル評価から、ベアリングは時間の経過とともに壊れやすくなる摩耗故障型であることが分かりました。
ここで設計者が考えるべきは、単に交換時期を決めることではありません。重要なのは、なぜ約280時間で寿命が現れるのかを、設計要因に分解して考えることです。
まず確認すべきは接触条件です。面圧や偏荷重、接触状態に無理があれば、局所的な負荷集中によって摩耗は加速します。
次に材料です。相手材との組み合わせや硬さ、表面処理によって寿命は大きく変わります。強度だけでなく、繰り返し使用に耐えられるかという視点が必要です。
さらに潤滑と保護も重要です。潤滑不足や異物侵入は、摩耗故障の典型的な要因です。設計者は部品単体ではなく、潤滑経路やシール構造を含めた機構全体として考える必要があります。
また、組み付け精度やばらつきも見逃せません。わずかな芯ずれや公差の影響が荷重集中を生み、寿命を大きく縮めることがあります。
そして最後に、交換前提か設計改善かという判断です。140時間で予防交換することは一つの対策ですが、それはあくまで対処にすぎません。設計者に求められるのは、寿命そのものを伸ばす設計です。
ワイブル解析は寿命を知るためのものではなく、壊れ方の傾向から設計の弱点を見つけるためのツールです。壊れ方を理解することで、設計で改善すべきポイントが見えてきます。
次回は、この考え方を具体化する「信頼性設計法」について解説します。 (次回へ続く)
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