機械設計で押さえておきたいアルミ合金の基礎と調質、表面処理の考え方若手エンジニアのための機械設計入門(12)(1/2 ページ)

3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第12回は、機械設計で使用頻度の高いアルミ合金を取り上げ、その基礎特性とともに、設計実務で重要となる調質や表面処理の考え方を整理する。

» 2026年01月09日 07時00分 公開

 連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、機械設計を始めて間もないエンジニアの皆さんを対象に、設計業務で押さえておくべき基礎知識や考え方などを分かりやすく解説していきます。

 前回は、JISの定義を踏まえながら、機械設計で多用される鉄鋼材料の種類と違いについて解説しました。

 今回はその続きとして、鉄鋼材料と並んで使用頻度の高い非鉄金属材料の代表例である「アルミニウム」および「アルミ合金」を取り上げます。

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 機械材料のうち、金属材料は大きく鉄鋼材料非鉄金属材料に分けられますが、非鉄金属材料の中でもアルミニウムおよびその合金は、軽量化が求められる機械設計において欠かせない存在です(図1)。本稿では、アルミニウムとアルミ合金の違いを整理した上で、設計実務で重要となる調質表面処理について解説します。

機械材料の体系図 図1 機械材料の体系図[クリックで拡大]

1.アルミニウムとはどんな材料か

 アルミニウム(Al)は、軽く、扱いやすい金属です。飲料缶やサッシ、電子機器の筐体、自動車部品など、身の回りの製品に幅広く使用されています。密度は約2.7g/cm3で、鉄(約7.8g/cm3)の約3分の1しかありません。この軽さは、機械設計において大きな利点となります。

 また、アルミニウムは空気中で自然に酸化皮膜を形成するため、比較的さびにくい性質を持っています。切削、曲げ、押し出し、鋳造といった多様な加工方法に対応できること、熱や電気をよく通すこと、リサイクル性が非常に高いことも特長です。

 一方で、機械用途として重要となる「強度」の面では、純アルミニウムは必ずしも万能ではありません。アルミニウムの主な特性を整理すると、次のようになります。

  • アルミニウムの主な特性
    • 軽量である(密度約2.7g/cm3
    • 表面に自然酸化皮膜を形成し、比較的耐食性が高い
    • 切削、曲げ、押し出し、鋳造など幅広い加工が可能
    • 熱伝導率、電気伝導率が高い
    • リサイクル性が高い

 これらの特性は設計上のメリットとなる一方で、純アルミニウム単体では強度や耐摩耗性が不足する場面も多く、用途は限定されます。

2.アルミ合金とはどんな材料か

 アルミ合金は一般に「アルミ」と“ひとくくり”にされがちですが、材料としては純アルミニウムアルミ合金に分けて考える必要があります。

 純アルミニウムとは、アルミニウムの含有率が99%以上の材料を指します。添加元素がほとんど含まれていないため、軽さや耐食性といったアルミ本来の性質を強く持っています。しかしその半面、強度が低く、やわらかいため、ねじ締結部がつぶれやすく、摩耗にも弱い材料です。構造部品として使用するには力不足であり、用途は限定的になります。

 これに対してアルミ合金は、アルミニウムにマグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などの元素を意図的に添加し、実用的な強度を与えた材料です。2000系から7000系までの系列があり、実際の工業製品で使用されるアルミ材料のほとんどが、このアルミ合金に該当します。

 純アルミニウムとアルミ合金では、密度にほとんど差はありません。合金化してもアルミの軽さは維持されます。一方で、引張強さや硬さは大きく異なります。純アルミニウムが70〜120MPa程度であるのに対し、アルミ合金は材料や調質によって200〜500MPaを超える強度を持ちます。この強度差が、機械部品でアルミ合金が主流となっている理由です。

 耐食性については純アルミニウムが最も優れていますが、アルミ合金も実用上十分な耐食性を備えています。ただし、銅を多く含む2000系アルミ合金は耐食性が低く、表面処理を前提に使用する必要があります。

 加工性の観点では、純アルミニウムは成形性に優れる一方、切削加工では工具に付着しやすい傾向があります。アルミ合金は切削性が比較的安定しており、機械加工との相性が良いため、機械部品に多く用いられています。

項目 アルミニウム(純アルミニウム) アルミ合金
定義 Al含有率99%以上 Alに他元素を添加
系列 1000系 2000〜7000系
添加元素 ほぼなし Mg、Si、Cu、Znなど
位置付け 基礎材料 工業用実用材料
代表材 A1050、A1100 A5052、A6061、A2024
表1 アルミニウム(純アルミニウム)とアルミ合金の定義

項目 純アルミニウム アルミ合金 設計者向け補足
密度 約2.7g/cm3 約2.7g/cm3 重さはほぼ同じ
引張強さ 70〜120MPa 200〜600MPa 数倍の差
硬さ 非常に低い 高い ねじ締結に差
剛性(E) 約70GPa 約70GPa ほぼ同じ
耐食性 非常に高い 高い〜中 系列で差
摩耗耐性 低い 中〜高 摺動部は注意
切削性 やや悪い 良い 合金の方が安定
曲げ加工性 非常に良い 良い〜普通 材料依存
熱伝導率 非常に高い 高い 純アルミニウム有利
導電率 非常に高い やや低い 電気用途向き
表2 純アルミニウムとアルミ合金の特性比較

 「ジュラルミン」という呼び名は、アルミ合金とは別の材料を指すものではありません。アルミ合金の中でも、銅(Cu)を添加して高強度化した2000系アルミ合金の通称です。代表例としてA2017やA2024があり、特にA2024は高強度であることから「超ジュラルミン」と呼ばれることもあります。

系列 主添加元素 代表材
2000系 Cu A2017、A2024
3000系 Mn A3003
5000系 Mg A5052
6000系 Mg+Si A6061
7000系 Zn A7075
表3 アルミ合金の系列

材料 特長
A1050(純アルミニウム) 強度は低いが、成形性、溶接性および耐食性に優れる
A5052(合金) 中程度の強度を持ち、耐食性、成形性および溶接性に優れる
A6061(合金) 耐食性が良好で、主にボルト/リベット接合の構造用材として用いられる
A2017(合金) 熱処理合金で強度が高く、切削加工性も良い(ジュラルミン)
A2024(合金) 強度が高く、切削加工性も良い(超ジュラルミン)
表4 アルミ合金の種類

 アルミ合金については、「JIS H 4000:2014 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条」に定義があります。

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