機械設計で押さえておきたいアルミ合金の基礎と調質、表面処理の考え方若手エンジニアのための機械設計入門(12)(2/2 ページ)

» 2026年01月09日 07時00分 公開
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3.アルミ合金の調質とは

 アルミ合金の機械特性を理解する上で欠かせないのが調質です。

 調質とは、加工や熱処理の履歴を記号で表したもので、その材料が現在どのような性質を持っているかを示します。材質記号の後ろに付く「T6」「H32」「O」などがこれに該当します。

 例えば、A5052-H32は、冷間加工後に安定化処理を施した半硬質状態の材料です。耐食性と成形性のバランスが良く、設計実務で扱われることの多い代表的なアルミ合金の1つです。

 引張強さや降伏点などの数値を検討する際には、材質名だけでなく、必ず調質まで含めて確認する必要があります。調質が異なれば、同じ材質でも性質は大きく変わるためです。

4.アルミ合金の表面処理

 アルミニウムおよびアルミ合金は、自然酸化皮膜によって比較的さびにくい金属ではありますが、設計実務では表面処理を前提に使用する材料と考えた方が安全です。

 その理由は、アルミ合金が摩耗に弱く、外観が安定しにくいことや、使用環境によっては腐食が進行する場合があるためです。また、電気的な導通や接触部でのトラブルが問題になるケースもあります。

 代表的な表面処理としては、耐食性や外観を向上させるアルマイト処理、耐摩耗性を高める硬質アルマイト、塗装前処理としての化成処理(※1)、特殊用途で用いられるメッキ処理などがあります。重要なのは、材料単体で評価するのではなく、使用環境や機能要求を踏まえ、材料と表面処理をセットで選定することです。

※1:化成処理とは……金属表面に化学反応によって非常に薄い皮膜(化成皮膜)を形成する表面処理の総称のこと。

表面処理方法 処理概要 主な目的 特長/メリット 機械設計向け主な用途
アルマイト 電解により酸化皮膜を形成 耐食/外観 耐食性
着色可能
筐体、外装、一般機械部品
硬質アルマイト 厚膜酸化皮膜 耐摩耗 高硬度
摺動性向上
軸、ガイド、摺動部
化成処理
(クロメート)
化学反応で薄膜形成 防錆/下地 被膜が薄い
導通性維持
塗装前処理
化成処理
(ノンクロ)
クロム不使用化成皮膜 防錆/環境対応 RoHS対応 塗装前処理
メッキ
(Ni、Crなど)
金属皮膜付与 耐摩耗/装飾 高耐摩耗
外観良
特殊用途
表5 アルミ合金の代表的な表面処理

 今回は解説できませんでしたが、銅合金については「JIS H3100:2018 銅及び銅合金の板及び条」で定義されています。材料特性を理解する上で参考になりますので、一読してみるとよいでしょう。次回からは、これまで解説してきた材料特性を踏まえ、強度設計について解説します。 (次回へ続く

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著者プロフィール

土橋美博(どばし よしひろ)

半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。

ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)、ワールドワイドのソリッドワークス・ユーザーグループネットワーク(SWUGN)のリーダーも務める。


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