3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第9回は、公差設計の運用、PDCAを回す重要性について取り上げる。
連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、機械設計を始めて間もないエンジニアの皆さんを対象に、設計業務で押さえておくべき基礎知識や考え方などを分かりやすく解説していきます。
これまで「公差」をテーマに、確率統計の考え方や工程能力指数(Cp)について解説してきました。設計製図分野と、このような数学や工学に基づく理論との連携によって、正しいシミュレーションが可能になります。これは、まさに強度解析と同じ手法だと筆者は考えています。
そこで今回は、公差設計がどのように運用されるべきかについて解説します。
前回説明したように、公差の設定は設計者が行います。設定された部品は実際に加工され、製品として組み立てられます。現場ではこれに基づいて組み立てが行われますが、不良が発生することもあります。そのような場合、製造現場ではサンプル測定や、場合によっては全数検査が実施されることもあります。
では、設計者が不良率のシミュレーションを行っていた場合、そのサンプル測定結果は同じになるのでしょうか。「実績のある部品を、実績のある加工機械と作業者によって、同じ室温/湿度、全て同じロットの材料を使用して製造する」といった理想的な条件の下で、設計者が工程能力指数を参考にしているのであれば、同じ結果が得られるかもしれません。しかし、現場ではこうした理想的な条件が整わないこともあり、常に同じ結果になるとは限りません。
ここで、これまでの不良率の算出に至る手順をまとめておきます。
この手順にあるように、最終的な公差の評価と設定に至るまで、仮想的、すなわち机上での検証が行われています。では、公差計算と実態との整合性には、どのような課題があるのでしょうか。
公差計算と実態の整合性の課題は、そもそも公差を必要とする要因でもある「4M」にあると筆者は考えます。以下に、4Mが与える影響を整理しました。
1.Man(人)
2.Machine(機械)
3.Material(材料)
4.Method(方法/環境)
まとめると、公差計算による設計は「正規分布を前提」に行われますが、現場では人、機械、材料、方法の影響が重なり、実測値には理想から外れる要因が多く含まれているということです。
このため、公差設計においてはPDCAの実践が必要です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
メカ設計の記事ランキング
よく読まれている編集記者コラム