公差設計のPDCAを回す若手エンジニアのための機械設計入門(9)(3/3 ページ)

» 2025年10月02日 06時00分 公開
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公差解析について

 公差設計のPDCAで説明したように、3D CADが持つデジタル情報を活用することで、公差解析が可能になります。機械設計や製造業で広く利用されている公差解析ツールとして、筆者は「TolAnalyst」(開発元:ダッソー・システムズ)、「CETOL 6σ」(開発元:Sigmetrix)、「TOL J」(開発元:プラーナー)を評価/運用しています。これらは機能の詳細こそ異なりますが、共通したメリットを持っています。

  • 設計品質の向上
    • 製品機能の保証:公差の累積を事前に確認し、クリアランスや組み立て精度を保証
    • 設計ミスの早期発見:干渉やガタなどを試作前に予測し、手戻りを防止
  • コスト削減
    • 過剰設計の回避:不要に厳しい公差指定を避け、加工費を抑制
  • 不良率の低減
    • 不良率の予測:統計解析により不良率を事前に把握
    • 歩留まり改善:分布の偏りを考慮し、量産時の歩留まりを向上
  • 設計と製造の橋渡し
    • 現場との整合性:材料、加工、測定能力に即した公差設定が可能
    • 標準化/教育:解析結果を基に設計ルールや社内基準を整備
  • リスクマネジメント
    • 工程能力の把握:Cp/Cpkを用いて、工程が要求精度を満たしているか確認
    • 保証リスクの低減:設計段階でリスクを先取りし、トラブルやリコールを防止


 公差解析は、設計品質の向上、コスト削減、不良率の低減、現場適合、そしてリスク低減に直結します。若手エンジニアの皆さんも、ぜひ意識して取り組んでみてください。次回は「機械材料」について解説します。(次回へ続く)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

著者プロフィール

土橋美博(どばし よしひろ)

半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。

ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)、ワールドワイドのソリッドワークス・ユーザーグループネットワーク(SWUGN)のリーダーも務める。


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