公差設計のPDCAを回す : 若手エンジニアのための機械設計入門(9) (3/3 ページ)
公差設計のPDCAで説明したように、3D CADが持つデジタル情報を活用することで、公差解析 が可能になります。機械設計や製造業で広く利用されている公差解析ツールとして、筆者は「TolAnalyst」(開発元:ダッソー・システムズ)、「CETOL 6σ」(開発元:Sigmetrix)、「TOL J」(開発元:プラーナー)を評価/運用しています。これらは機能の詳細こそ異なりますが、共通したメリットを持っています。
設計品質の向上
製品機能の保証:公差の累積を事前に確認し、クリアランスや組み立て精度を保証
設計ミスの早期発見:干渉やガタなどを試作前に予測し、手戻りを防止
コスト削減
過剰設計の回避:不要に厳しい公差指定を避け、加工費を抑制
不良率の低減
不良率の予測:統計解析により不良率を事前に把握
歩留まり改善:分布の偏りを考慮し、量産時の歩留まりを向上
設計と製造の橋渡し
現場との整合性:材料、加工、測定能力に即した公差設定が可能
標準化/教育:解析結果を基に設計ルールや社内基準を整備
リスクマネジメント
工程能力の把握:Cp/Cpkを用いて、工程が要求精度を満たしているか確認
保証リスクの低減:設計段階でリスクを先取りし、トラブルやリコールを防止
公差解析は、設計品質の向上、コスト削減、不良率の低減、現場適合、そしてリスク低減に直結します。若手エンジニアの皆さんも、ぜひ意識して取り組んでみてください。次回は「機械材料 」について解説します。(次回へ続く)
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土橋美博 (どばし よしひろ)
半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。
ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)、ワールドワイドのソリッドワークス・ユーザーグループネットワーク(SWUGN)のリーダーも務める。
実例で学ぶ公差設計 〜穴と軸から不良率を推測する〜
3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第8回では、穴と軸のはめ合いを題材に、公差設計に確率統計を応用し、不良率をどのように予測できるかを取り上げる。
確率統計で考える公差設計
3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第7回では、設計におけるバラつきを前提に、確率統計の考え方を公差設計にどう応用するかを分かりやすく説明する。
データムを必要とする幾何公差【その1】〜姿勢公差の平行度〜
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第8回はデータムを必要とする幾何公差をテーマに、姿勢公差の平行度について取り上げる。
データムを必要とする幾何公差【その2】〜姿勢公差の直角度〜
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第9回はデータムを必要とする幾何公差をテーマに、姿勢公差の直角度について取り上げる。
データムを必要とする幾何公差【その3】〜姿勢公差の傾斜度〜
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第10回はデータムを必要とする幾何公差をテーマに、姿勢公差の傾斜度について取り上げる。
データムを必要とする幾何公差【その5】〜位置公差の位置度〜
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第12回は「位置公差」のうち「位置度」について取り上げる。
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