公差設計のPDCAを回す若手エンジニアのための機械設計入門(9)(2/3 ページ)

» 2025年10月02日 06時00分 公開

公差設計のPDCA

 公差設計と実態との間にある差異を改善し、設計精度を高めていくには、公差設計のPDCAサイクルを回していく必要があります。

PDCAサイクルとは

 まず、一般的なPDCAサイクルについて説明します。PDCAとは、改善活動や品質管理の基本となる「継続的改善」のサイクルであり、次の4つのステップで構成されています。

1.Plan(計画)

  • 目標を立て、達成のための方法を計画する段階

2.Do(実行)

  • 計画した方法を実際に試してみる段階

3.Check(評価/確認)

  • 実行した結果をデータで確認し、計画通りかを評価する段階

4.Action(改善/標準化)

  • 成功した方法を標準化し、次の活動に生かす段階

※課題が残る場合は、再び「Plan」に戻って改善を続ける。

 PDCAサイクルとは、計画→実行→評価→改善を繰り返すことで、業務や設計の品質を継続的に高めていく仕組みです。

公差設計におけるPDCAサイクル

 一般的なPDCAサイクルについて説明しましたが、公差設計におけるPDCAサイクルはどのようになるのでしょうか。以下にまとめます。

公差設計のPDCA 図1 公差設計のPDCA[クリックで拡大]

1.Plan(計画)

  • 設計段階での目標設定
  • 製品機能に必要な寸法精度を明確にする
  • 許容できる不良率を推測/設定する
  • 材料特性、加工方法、組み立て方法を考慮し、公差の目標値を定める
  • 解析による事前評価
  • 公差解析(バラつき伝播計算や統計的手法など)を用いて、設計公差が機能要件を満たすか確認する

2.Do(実行)

  • 試作、試験生産、生産の実施
  • 設定した公差で部品を加工/組み立てし、実寸法データを取得
  • 測定と評価方法の確立
  • 測定器や測定条件を整備し、バラつきを正しく把握できる仕組みを実行

3.Check(評価)

  • 設計と実測値の比較
  • 試作結果の寸法分布が、設計時の想定(正規分布やシミュレーション)と一致しているかを確認
  • 不良率の検証
  • 不良率が計画値以内に収まっているか評価する
  • 分布に異常が見られる場合は、その要因を4M(人/機械/材料/方法)から特定する

4.Action(改善)

  • 設計の修正
  • 公差の再設定、または加工方法/治具の改善を実施
  • 標準化と展開
  • 効果が確認できた条件や設計ルールを標準化し、次の設計にフィードバックする
  • 社内設計基準やチェックリストに反映し、再発防止と継続的改善につなげる

 このPDCAを繰り返すことで、現場に即した公差管理が可能になります。

 設計者は厳しい公差を設定しがちですが、加工部門や調達部門はコストや納期の観点から、緩い公差を望む傾向があります。ここには常に「公差のせめぎ合い」が存在します。

 つまり、公差設計のPDCAは設計部門だけでなく、調達/加工/品質管理、さらには外部加工会社との連携によって回す必要があります。設計者には、CADの前に座るだけでなく、現場に足を運ぶ姿勢も求められます。

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