ホンダは、2024年5月に2021〜2030年度の10年間で累計10兆円を投資する計画を発表したものの、2025年5月には四輪車電動化戦略を軌道修正し、EV関連投資を後ろ倒すことで3兆円減の7兆円にするとしていた。今回の損失計上により、四輪車電動化戦略そのものを抜本的に見直し、ICE(内燃機関車)とHEV(ハイブリッド車)を中心とするモデルミックスを行い、EVは需要が再び拡大に転じるタイミングを見据え長期的な視点で仕込みを継続する程度にリソース配分を抑える。
戦略の中核になるのはHEVだ。2020年代後半にかけて北米でHEVの新商品を追加で投入していく。2027年以降には、次世代のハイブリッドシステムを主力モデルに順次搭載する他、北米で市場規模の大きいDセグメント以上の大型車向けに新たに開発したハイブリッドシステムを適用し、ラインアップを拡大する。なお、これらのHEVには、今回開発の中止を決めたHonda 0 SUVやHonda 0 Saloonなどの「0シリーズ」に搭載予定だった、次世代ADAS(先進運転支援システム)を搭載する方針である。三部氏は「これまでEV開発で培ってきたソフトウェアの技術や知見は、無駄にすることなく今後に生かしていく。特に『ASIMO OS』や次世代ADASといった0シリーズで提供しようとしていた価値は、HEVを通じて大きく時間軸を変えることなく提供する」と強調する。
なお、「Japan Mobility Show 2025」では、0シリーズのコンパクトモデルとして「Honda 0 α」を公開している。このHonda 0 αについては、北米市場向けではなく、日本市場や今後強化を図るインド市場などで活用できることから開発を継続する方針である。
日本市場でも2027年以降に次世代ハイブリッドシステムの本格展開を進めていく。次世代ADASについては、コンパクトSUV「ヴェゼル」の新モデルから搭載し、手の届く、競争力のある価格帯で提供することで日本での普及を目指す。この他、スポーツモデルで展開予定の「SPORT LINE」や「TRAIL LINE」、北米生産車の導入などと併せて、軽自動車や小型モデルの販売比率が高い日本のラインアップの底上げを図るという。
市場拡大が期待されるインドは重点国として抜本的な事業強化を図る方針。一方、今回の発表で投資損失を計上した中国は、市場の特性を踏まえて、智能化/電動化技術の搭載を一層強化するとともに、中国市場に最適な競争力のあるサプライチェーンを構築して、商品力とコスト競争力の抜本的な強化を進める。
また、モノづくり改革も「開発期間短縮」「生産効率改善」「サプライチェーン強化」の3軸で進める。特に、サプライチェーン強化では、関税の影響が大きい北米で2027年以降に展開する次世代HEVを中心に現地調達率を高める方針である。特に、主要部品であるバッテリーについては、LGエナジーソリューションとの合弁で設立したL-H Batteryを中心にEV用バッテリーの生産ラインをHEV用に転換し、現地生産を行う検討を進めている。また、ESS(電力貯蔵システム)用への転換も図り、L-H Batteryの安定稼働も同時に実現するとしている。
三部氏は「現在は北米などでEV需要が減速しているが、これは永続的なものではないと考えている。カーボンニュートラルの実現に向け、将来、EV需要が再び拡大に転じたとき、その期待に正面から応え、ホンダらしい魅力ある商品をお届けするためには、収益性や需要動向とのバランスを見ながら、長期的な視点で柔軟にEVへの仕込みを続けていくことが必要だと考えている。そのためにも、今は一度足元を見つめ直し、収益構造を立て直すことが必要だと判断した」と述べている。
なお、今回の四輪電動化戦略の見直しを踏まえて再構築する予定の中長期戦略は、2026年5月に発表する予定だ。
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