OLPは、どのようなロボット導入環境でも効果を発揮しますが、特に効果が大きいのが少量生産やサイクルが短い製造環境です。
従来のオンラインティーチングでは、頻繁なセットアップ変更や段取替えごとにロボットを停止し、ティーチペンダントで動作を教え直す必要がありました。これにより、可用性や稼働時間が大幅に低下します。
一方でOLPでは、仮想環境でプログラムを事前にテスト、生成するため、物理的な変更作業と並行してティーチングが進められます。最終的に低速でプログラムを走らせてチェックするだけで即座に生産を再開できるケースもあります。
また、設計関連の不整合やモデルの誤りは、事前にドキュメントやモデル上で発見/共有し、生産停止時間を発生させることなく解決することが可能です。これにより、短い生産サイクルを阻害する要因を前もって取り除くことができます。
ここで、2つのOLPの導入事例から具体的に得られた効果を紹介します。
南アフリカの大型トレーラー製造業者A社では、溶接工程におけるロボットティーチングに多くの時間を要していました。従来は、セル内でロボットを停止させた状態で、約2週間かけてティーチングを実施していました。
OLPを導入した結果、「ロボット動作の大部分をオフラインで作成」「現場では最終調整のみを実施」という運用に切り替えることができ、ティーチング期間は約4日に短縮されました。これにより、設備停止時間の削減だけでなく、生産計画の柔軟性向上にもつながりました。
その結果、生産量は1日当たり8ビン(Bin、専用のコンテナ容器の単位)から16〜20ビンに増加しました。
フィンランドの金属加工メーカーB社では、少量多品種生産への対応が課題となっていました。
治具を固定化せず、製品ごとに条件が変わる工程では、手動ティーチングの負担が大きくなりがちです。OLPを活用することで、「CADデータを基にロボット動作を事前に作成」「製品変更時もプログラムを素早く再生成」などの業務が可能になり、溶接や切断といった工程での段取替え時間が短縮されました。
結果として、生産性向上と同時に、柔軟な生産対応力の強化が実現しています。
OLPは、生産性向上の可能性が指摘されている手法の一つです。作業セル内でティーチペンダントを用いて手動でティーチングを行う方法と比べると、OLPには異なる特性があり、運用次第では製造現場にとって有効な選択肢となり得ます。
主なポイントとして、次のような点が挙げられます。
OLPは、デジタルツインやシミュレーション技術と組み合わせることで、より高度なロボット活用を可能にします。多品種少量生産や頻繁なレイアウト変更が求められる環境では、事前に検証できる仕組みそのものが競争力になります。
今後、ロボットを「止めずに改善する」ための標準的な手段として、OLPはますます重要な位置付けを占めていくでしょう。
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中村 正明(なかむら・まさあき)
ビジュアル・コンポネンツ・ジャパン株式会社 カントリーマネージャー
自動化やロボティクス、産業用ソフトウェア分野での経験に加え、欧州とアジアの各市場をつなげる国際的な経験を併せ持つ。ビジュアル・コンポネンツではその経験を生かし、日本事業のビジネス開発、カスタマーサクセス、パートナーシップなどを統括し、国内においてビジュアル・コンポネンツの存在感の強化を図る。
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