AGVとAMRはそれぞれ長所と短所がある。自社の製造現場に最適な無人搬送機を選ぶことが肝心だ。
導入に際して現場での確認が必要な例を幾つか挙げる。
・カゴ車
日本の製造現場では荷物の運搬や一時保管などにカゴ車を利用することが多く、所狭しと並べられたカゴ車が工場内を埋め尽くしている現場も数多い。
加えて、現場の仕様に合わせた独自のカゴ車を活用しているのも特徴で、カゴ車の底部は床との間にすき間がないため、GTP(棚移動型)がカゴ車の下に滑り込むことができず、けん引型を選択したり、独自のアタッチメントを作る必要があったりする。
海外では規格品での利用が多いため、海外メーカーのAGVやAMRが使用できなかったり、キャスターが回転しない(1方向のみ)カゴ車はけん引に支障を来たすこともある。
また、AGV、AMRともにカゴ車との自動切り離しは可能ても、自動連結ができず、連結を人手で行う機種も多いので、事前にしっかり確認すること。
・フォークリフト
多くの製造現場では製品の運搬にフォークリフトを活用している。何台ものフォークリフトがひっきりなしに行き交い、安全性に最善の注意が必要な現場も多い。
固定的なルート(2拠点間)の反復搬送(A⇔B)の場合は、AGV専用の通路を確保するのがベスト。AGV専用通路の確保が難しい場合は、フォークリフトといかに共存させるかがポイントになってくる。
もし共存できない場合は、AMRを導入してフォークリフトとの優先順位付けをすることになるが、安全性確保の観点からはあまり推奨できない。
無人搬送機を導入することで生産性の向上が期待できる場合、既存設備の配置転換、製品置き場や搬送ルートのレイアウト変更など、思い切った対策をとる必要があるだろう。 あるいは、人が運転するフォークリフト自体を自律走行させたり、一部のフォークリフト(例えば、夜間稼働が可能な搬送ルートなど)を無人搬送機に代替えしたりすることも選択肢に入ってくるかもしれない。
・工場間/建屋間
自社敷地内の工場建屋間の運搬には、現状はフォークリフトを活用することが多いが、フォークリフトに代わって、屋外対応のAMRや無人搬送サービス※5を導入するケースも増えつつある。
屋外対応のAMRは環境変化(特に太陽の光や雨、雪)や路面の凸凹、段差などにも強く、高い走行性能をうたう機種もあるが、安全確認と監視のために遠隔地にいるオペレーターがリモート操作するタイプもある。
人手による建屋間搬送が1日どれくらいの頻度で行われ、どれくらいの時間を要しているのかなど現状を検証し、無人搬送機が本当に滞りなく稼働し、費用対効果からも導入に値するのか現場で十分確認する必要があるだろう。
※5 自動運転EVを活用した屋外対応の無人搬送サービス(eve auto)
・その他
製造現場によってはサインポストやQRコードなどを張り付ける場所がなかったり、あるいは高い場所にしか貼るスペースがなかったりなど、現場の状況に合わせた対応が必要になる場合がある。
また、LiDAR SLAMは環境の変化に影響され、センサーで床を認識する場合は床の凸凹や段差で正常に作動しないことも想定されるので、事前に現場の環境や状態を正確に把握しておくことが重要だ。
以下に無人搬送機を導入する際の目安を示す。ただし、例外もあるので機器詳細はメーカーに確認してほしい。
2〜5カ月程度。受注生産が大半であり、在庫状況による。
1日〜2日程度。ユーザー自ら行う場合とメーカーが行う場合がある。磁気テープの最初の敷設やQRコードの張り付けなどはメーカーが行うことが多い。
メーカーによる。基本的にユーザーが行う場合は無料だが、年間保守契約を有料で結ぶ場合もある。
100〜700万円台程度。サブスクリプションやレンタルできる場合もある。AMRはAGVに比べ、倍以上の価格だと思っていた方がいい。本体価格にシステム設計、周辺関連機器との連携、保守などを含めると、1台1000万円以上かかる場合もある。
導入費用を抑えたい場合はAGVを基本にし、AGVを導入しやすい現場環境を整えること。AMRを導入する場合は性能をよく比較検討し、将来的な工場のあるべき姿を十分考慮した上で、自社の現状に最適な無人搬送機を選ぶことが重要だろう。
今後、製造現場での自動化、ロボット化は避けては通れない。現場のDXや生産性の向上、人員の効率的配置転換などを目的に無人搬送機を導入する場合、さまざまな補助金や支援制度もある。
高価なAMRにこだわる必要はないが、価格だけで導入を諦め、将来の発展の芽を自らつんでしまうことだけは避けたい。
次回(第8回)は、将来展望について記述する。
小林賢一
株式会社ロボットメディア 代表取締役
NPO法人ロボティック普及促進センター 理事長
2005年から20年間にわたりインフラ・プラント点検、建築施工、製造工場、介護・高齢者見守り、生活支援などの分野でロボット関連技術の調査、開発支援、実証実験、利活用、セカンドオピニオンに携わり、現在、ロボットビジネスに関するさまざまな相談に応対している。
ロボットビジネスのプレイヤーとして新たな活躍を目指すための講座(日本ロボットビジネス体系講座)や、与えられた「解」ではなく、自ら「解」を導き出し、収益につながるビジネスモデルをコーチングするワークショップ(ロボットビジネス・マインドリセット)を主宰。書籍「ロボットビジネスの全貌シリーズ」の監修、発行も行った。利害関係のない中立で公正な「ロボット・セカンドオピニオンサービス」や、異なる領域・用途にも利用可能な両用技術で既存事業と極限環境双方から収益確保を目指す研究会「ハイブリッドデュアルユース/ダブルインカム」などを実施。
ロボット産業創出推進懇談会 座長(2016〜2021年)
ロボット保険サービス 代表(2012〜2021年)
かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会 事務局長(2011〜2015年)
ロボット実証実験実行委員会 委員長(2011〜2014年)
介護・医療分野ロボット普及推進委員会委員(2010〜2012年)など
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