自動車産業の新たな競争構図は「フィジカルAIカー」対「エンボディドAIカー」へ和田憲一郎の電動化新時代!(62)(2/3 ページ)

» 2026年03月03日 08時00分 公開

自動車をロボティクスの視点から見ると

 さて、ここで一度、自動車をロボティクスの観点から捉えてみたい。ロボット技術は多彩/多層的であるが、関連するAI技術を機能別に整理すると以下のように分けられると推定される。

1.身体の知能AI(フィジカルAI)

  • 基本概念
    • フィジカルAIとは、ロボットが物理世界において適切に動作するための知能を指し、力学、制御、身体性を統合することで、環境との相互作用能力を高めるAI
  • 自動車における役割
    • 車体(シャシー、サスペンション、モーターなど)の運動制御
    • 力学的安定性、制御性能、エネルギー効率の最適化
    • 走行性能および乗り心地の質的向上

2.行動の知能AI(エンボディドAI)

  • 基本概念
    • エンボディドAIは、物理的な身体(ロボット、センサー、アクチュエーターなど)を持ち、視覚/触覚/聴覚などのセンサー情報を統合し、実世界と相互作用しながら自律的に学習/行動するAI
  • 自動車における役割
    • マルチモーダル学習(視覚+触覚+聴覚)
    • 自動運転の判断/行動計画が高度化
    • センサーで環境を理解し、行動を学習

3.その他のAI機能

 上記に加え、認識AI、言語AI、計画AI、協調AI、自己診断AIなどが想定される。

なぜフィジカルAIカーとエンボディドAIカーなのか

 近年、中国の新興自動車メーカーを中心に、自動運転技術の高度化が急速に進展している。Baidu、Pony.ai、Xpeng、さらには米国のテスラ(Tesla)といった企業はその代表例であり、いずれも自動運転機能を中核とする「フィジカルAIカー」の実現を志向していると考えられる。

 一方で、自動運転技術そのものよりも、AIを活用したUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上に重点を置くメーカーも台頭している。Xiaomi、Leapmotor、NIOなどが典型であり、彼らは「エンボディドAIカー」を指向するグループに位置付けられる。

 搭載するAI技術としては、VLA(Vision-Language-Action)に基づくE2E(End to End)モデル、パーソナルAIアシスタントを中心に、AI音声やAIキャラクターを介したユーザーとの親和性の向上を重視している。特にXiaomiは、スマートフォンやIoT(モノのインターネット)デバイスとの連携を強化し、自動車を「走るスマートデバイス」へと進化させる方向性を明確に打ち出している。

 このような戦略の背景として、Baidu、Pony.ai、Xpeng、テスラなどは、早期から自動運転分野に大規模な人材/資本投下を行い、技術開発を先行させてきた。一方で、Xiaomi、Leapmotor、NIOなどは、自動運転技術の必要性を認識しつつも、現時点では、他社との差別化を図るため、自社が強みを持つUX(ユーザー体験)領域に注力し、顧客満足度の向上を戦略的に追求していると考えられる。誤解がないように言えば、自動運転技術は後追いであり、先行集団に追い付こうと考えているグループともいえる。

 結果として、自動車メーカーは、自動運転技術を最優先する「フィジカルAIカー」を目指すのか、あるいはUXを中心にスマートデバイス連携を強化する「エンボディドAIカー」を志向するのかという2つの方向性に分岐しつつあるのではないか。

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