――チョッパーの特長についても教えてください。
藤野氏 チョッパーはブレンダー本体を取り付けて使用する構造です。特長の一つが「中蓋」の採用です。一般的なチョッパーはギアを含む蓋で直接容器を密閉するため、ひき肉などの調理後は蓋の裏に食材が付着しやすいのに、水洗いできないという課題がありました。そこで今回の製品には中蓋を設け、ブレードと容器とともに洗える構成としました。
もう一つの特長は容量です。コードレス製品は電力制約から小容量になりがちですが、今回の製品では蓋内部に減速ギアを組み込み、回転数を抑える代わりにトルクを高める設計を採用しました。その結果、玉ねぎなら2個、角切り肉なら約300gを一度に調理できます。さらに容器内側に4本のリブを設けて食材の対流を促しています。途中で混ぜ返すことなく、玉ねぎなら5〜10秒程度で均一なみじん切りが可能です。
――ブレンダー&チョッパーの開発で苦労した点を教えてください。
藤野氏 最大の課題は電気制御を伴う製品だったことです。当社は刃物を中心とした非電動製品が主力のため、基板を含むソフトウェアとハードウェアを同時に設計する開発は難易度の高い領域でした。過負荷時に電流を監視して停止させる制御や基板部品への負荷トラブルも発生し、部品選定や設定値の検証を繰り返しながら最適化を進めました。
次に、防水性と強度の両立です。刃は毎分約1万4000回転で動作しつつ、内部への浸水を防ぐ構造と食材に押し当てても耐えられる強度が必要でした。部品構造を一から見直し、他社製品の分解調査や試作を重ねながら設計を詰めました。
さらに構造上、部品点数が多いことも課題でした。SELECT100はシンプルなデザインを重視するブランドであるため、見た目と強度の両立を図る必要がありました。金型を含めた細かな調整を積み重ね、最終的に製品として成立する品質に仕上げました。
――試行錯誤を重ねながらの開発だったのですね。
藤野氏 そうですね。チョッパー容器内側のリブも最初から完成形があったわけではありません。初期段階では爪ようじのようなものを貼り付けて食材の動きを確認するところから始め、3Dプリンタによる試作を重ねながら撹拌状態と刻み具合を検証しました。リブ構造は他社でも採用例がありますが、撹拌性能と刻み残しの少なさにはトレードオフがあります。そこで今回は両立できる形状を探り、試作と検証を繰り返して最適な高さと形状にたどり着きました。
――Makuakeを活用した理由を教えてください。
藤野氏 Makuakeのユーザーは新しいものへの感度が高く、道具そのものへの関心も強いと感じています。今回は細部にまでこだわって開発した製品ですので、その価値や背景まで理解してもらえる場として適していると考えました。
もう一つの理由は過去の成功体験です。以前展開した自動生クリームホイッパー「生クリッチ」も、開発初期には社内で「本当に欲しい人がいるのか」と言われるほど説明が難しい商品でした。しかしMakuakeでプロジェクトを立ち上げたところ、「まさに欲しかった」という反応が多く寄せられました。その経験も今回の挑戦を後押ししました。
――Makuakeを実際に活用した感想や手応えを教えてください。
藤野氏 購入者の方からは、こだわった点を的確に評価していただいていると感じています。「中蓋が決め手だった」「刃の付け替えが不要なのが良い」といった声は、私たち自身が欲しいと思って形にした部分です。そこを理解した上で選んでもらえていることが、とてもうれしいです。コードレスである点も高く評価されており、使い勝手だけでなく設計思想まで含めて製品の価値が伝わっていると感じています。
――今後の展望について教えてください。
藤野氏 ブレンダーはこれから本格的に広げていく段階の商品です。料理家の方々にも使っていただきながら、魅力をより多くの人に伝えていきたいと考えています。SELECT100は現在約80品番のラインアップがありますが、「使いやすくシンプルな基本の調理道具」を軸に展開していることから、新しい商品を生み出すことは簡単ではありません。今後も刃物メーカーとしての強みを生かしつつ、ロングセラー商品も含め、現在のライフスタイルに合った形へとアップデートしていきたいと考えています。
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長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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