こうした不満を解消する手段として期待されているのが、実店舗とデジタルを融合させた「ユニファイドコマース(統合商取引)」だ。これは全販売チャネルと顧客データを単一プラットフォームでリアルタイムに統合する戦略を指す。調査では、買い物客の8割は、店舗とオンラインがシームレスに連携する体験を求めていることが分かった。古川氏は、「ユニファイドコマースを起点にリテールメディアと生成AIを活用することが、パーソナライズ化を成功させる鍵になる」と指摘する。
リテールメディアとは、小売事業者が運営するECサイトなどに、メーカー企業などの広告を配信する広告媒体だ。蓄積した自社購買データにAIを掛け合わせることで、従来の受動的な対応から脱却し、消費者の次の行動を先読みして提案を行う「予測型」の広告配信がリテールメディア上で可能になる。実際に、小売業の経営者の8割が「生成AIは今後3年間で業務の主要領域に大きな影響を与える」と回答しており、古川氏は「AIを駆使してストレスのない買い物体験を提供することは、現代の小売業者が取り組むべき最重要課題となっている」と語った。
一方、在庫管理の観点では小売業と買い物客の間で意識のギャップが生じている。調査結果によると、小売業経営陣の79%が「商品欠品時でも注文を受け付けられる現在のサービスに買い物客は満足している」と評価しているのに対し、実際に満足している買い物客は66%にとどまった。状況は改善傾向にあるものの、在庫切れや商品の場所が分からず購入予定の商品を全て手に入れることができずに退店した経験がある買い物客は全地域で52%と半数を占めた。小売業者は在庫管理のツールとして、今後5年間でコンピュータビジョン(世界57%、APAC 55%)、RFID(世界、APAC54%)、生成AI(世界51%、APAC62%)など先進技術の導入を計画している。
また、商品ロスや盗難、不正といった課題においても、先進技術が解決の糸口となり得る。例えば、防犯のためにショーケースにカギをかけ、商品を見るには店員を呼ぶ手間が必要な対策は、顧客体験としてマイナスのプロモーションになりかねない。これに対し、「RFIDなどを活用することで可視性を強化し、リアルタイムでの予測や検知を加速させ、異常を早期に発見/防止する仕組みが、顧客の信頼を守るための新しいツールとなる」と古川氏は説明した。
古川氏は、「小売業の未来はあくまで人間が中心であり、人がいなくなる世界ではない。AIは人間の能力を強化し、補完していくものだ」と強調する。「ユニファイドコマースを起点としてAIやリテールメディアネットワークを最大限に活用し、実店舗とデジタルを融合させた『フィジタル体験』を提供することが、変化する小売環境に求められている」と語った。
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