2026年4月、特定荷主へのCLO選任が義務化される。3200社が対象と推定される中、選任に迷う企業も多い。単なる法令対応で終わらせず、製造と物流の「部門の壁」を壊す経営変革の好機として制度を生かせるか。
2026年4月、日本の製造業における物流戦略は新たな局面を迎える。2024年5月に公布された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(通称、物流関連2法)」に基づき、特定荷主に対する「物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)」の選任義務化がついに開始されるからである。2024年の公布後約2年の猶予期間を経て残り3カ月を切り、もはや「検討中」という言葉は許されないフェーズに入った。
しかし、制度開始の直前でありながら、企業の足並みはそろっていないのが実情である。物流コンサルティングファームの船井総研ロジが2025年12月に発表した、CLO選任に関する調査によると、回答した荷主企業118社のうち、特定荷主に該当する企業の42%が「CLOの任命予定はない」と回答した。「選任済み」は15%、「今後選任の可能性がある(28%)」を合わせても半数に届かない状況であった。
法的義務になるにもかかわらず、なぜ4割強の企業が適応できずにいるのか。また、製造業は産業としての特性から特定荷主の対象になりやすいが、認識できていないことも多い。そこで、CLO選任義務化を阻む、製造業特有の構造的な課題を整理したい。
まず、前提となる法律の概要を紹介する。前述した物流関連2法の改正法では、荷主への規制強化として、年間貨物取扱量が9万トン以上の「特定荷主」に対し、CLOの選任が義務付けらることとなる。
ここで製造業が留意すべき点は、9万トンという重量には製品の出荷量だけでなく、原材料や部品の「入荷量」も含まれることだ。完成品が軽量な電子部品メーカーであっても、鋼材や液体などの重い原材料を大量に仕入れている場合は対象となり得る。コンサルティングファームのローランド・ベルガーでは「対象企業は約3200社」と推定しているが、自社が対象であるという認識が薄い企業も少なくない。
2026年4月以降、CLO選任は努力目標ではない「義務」として施行され、不履行は法令違反となる。経営層はこれを単なる総務上の手続きと捉えるのではなく、明確なコンプライアンスリスク、ひいては経営リスクとして認識する必要がある。
なお、本規制の背景や物流構造の課題については、ローランド・ベルガーの小野塚征志氏の講演記事も併せて参照されたい。
では、義務化されるCLOには、製造業において具体的にどのような役割が求められるのか。法文ではCLOの業務は「中期経営計画の作成」や「トラックドライバーの負荷低減」に加え、「関係部門間の連携体制の構築」と定義されている。これはすなわち、物流部門が製造(工場)や営業(販売)の計画に対し、物流負荷の観点から意見し、調整する権限を持つことを法が求めているに等しい。
そのためCLOの要件は「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」とされており、執行役員などの経営幹部から選任される必要がある。単に物流部長の肩書を変えるだけでは不十分であり、営業本部長や生産本部長と対等に渡り合い、時には工場の生産計画や営業の納期回答を見直させるだけの強制力を持ったリーダーが求められている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製造マネジメントの記事ランキング
コーナーリンク