規制対応で終わるな、2026年CLO義務化を武器に変える「勝つSCM戦略」とはサプライチェーン改革(1/2 ページ)

MONOistが開催したセミナー「サプライチェーンセミナー 2025 秋〜強靭かつ持続可能なモノづくりへ〜」において、ローランド・ベルガー パートナーの小野塚征志氏が登壇した。本稿ではその内容の一部を紹介する。

» 2025年12月15日 07時00分 公開
[長町基MONOist]

 アイティメディアの産業向けメディアであるMONOistは、2025年11月18日に製造業向けのライブ配信セミナー「サプライチェーンセミナー 2025 秋〜強靭かつ持続可能なモノづくりへ〜」を開催した。本稿では、「サプライチェーンで勝つ!−先端技術の活用による持続可能な競争優位の構築」と題してローランド・ベルガー パートナーの小野塚征志氏が行った講演の一部を紹介する。

全社戦略と現状課題の2つの視点からSCMの目指す姿を設計 全社戦略と現状課題の2つの視点からSCMの目指す姿を設計[クリックで拡大] 出所:ローランド・ベルガー

足元の物流費は売上高比5.5%まで上昇、ドライバー減少止まらず

 ローランド・ベルガーは欧州を起点としグローバルに展開する戦略系のコンサルティングファームだ。同社でサプライチェーン領域を担当する小野塚氏は、サプライチェーン全体の最適化やマネジメントの強化、プラットフォームビジネスの開発など多岐にわたる支援を行っている。

 近年、サプライチェーン最適化の文脈で頻繁に話題に上がるのが、「物流クライシス」や「物流危機」という言葉だ。ニュースなどでは、宅配会社のトラックが映し出され、「EC(電子商取引)急増に伴う宅配便のパンク」が原因であるかのような印象を与えている。しかし、小野塚氏は「確かにECの流通量は増えているが、B2Bの企業間物流を含む日本国内の総輸送量は微減傾向にある」(同氏)と、世間のイメージとは異なる現状を説明する。

 ではなぜ、輸送量が増えていないのにもかかわらず、物流危機が叫ばれるのか。真因は、トラックドライバーの減少だ。将来的にみても人手不足は深刻化し、物流の需給ギャップ拡大は避けられない。加えて、物流会社側でも、燃料費の高騰やドライバーの待遇改善に対応するため、荷主に対する運賃値上げの動きが加速している。

 この需給逼迫(ひっぱく)を受け、日本企業全体の売上高に占める物流コストの比率は、2003年以降5%以下で安定していたラインを超え、足元では5.5%まで上昇している(日本ロジスティクスシステム協会による調査)。しかし、物流費の上昇分を単なる価格転嫁(値上げ)だけで吸収しようとすれば、企業のコスト競争力そのものを失いかねない。高騰し続ける物流費をいかにコントロールするかは、いまや経営の根幹に関わる課題となっている。

政府も対策強化、2026年から義務化となる「CLO」とは?

 この課題に対し、政府も抜本的な対策に乗り出した。持続可能な物流の実現に向けて、「物資の流通の効率化に関する法律(通称、物効法)」と「貨物自動車運送事業法」を改正、その一部は2025年4月に施行された。

 特筆すべきは、一定の規模以上の特定事業者について、中長期計画の作成や定期報告を義務付けた点だ。さらに、特定事業者のうち、製造業や流通業などの荷主企業には、「物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)」の選任が義務付けられる(2026年4月施行予定)。特定荷主の定義では、年間取扱い貨物量が9万トン以上の事業者が対象となるが、この重量には出荷量だけでなく入荷量も含まれる。「例えば、自社製品の出荷量は5万トンであっても、原材料を9万トン以上調達していれば対象となる」(小野塚氏)

 そして、2026年4月以降、特定荷主が選任しなくてはいけないCLOは、従来の「物流部長」の延長ではなく、役員クラスの就任が想定されている。調達、製造、販売、そして物流という事業プロセス全体を見渡し、サプライチェーン全体の最適化を断行する権限とミッションが課せられるからだ。選任していない場合は法律違反となるため、経営層は早急な対応が求められる。

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