小売店での窃盗による損失が、グローバルで小売業の問題になっている。小売りの業界団体である全米小売業協会が発表した2022年の米国での被害額は1120億ドル(約16.5兆円)に上る。小売り事業者の78%が窃盗などの損失を最小化することが重大な課題だと認識しており、76%がこれに対応するテクノロジーへの投資を進めている。
小売店での窃盗による損失が、グローバルで小売業の問題になっている。小売りの業界団体である全米小売業協会が発表した2022年の米国での被害額は1120億ドル(約16.5兆円)に上る。
いわゆる万引きだけでなく、セルフレジでバーコードを通さずに持ち帰る、大人数で組織的に盗んでいく……など手口もさまざまだ。また、米国の州によっては被害額が一定以下だと窃盗を取り締まってもらうのが難しいなどの事情もある。従業員による横領の被害も少なくない。
日本でも、ドラッグストアでの窃盗が増加傾向にあると報じられた。容疑者が訪日外国人の場合は被害額が日本人容疑者の8倍以上となるという統計も出ており、定価が高く換金性も高い医薬品や化粧品が対象になっているとみられる。
ゼブラ・テクノロジーズ・コーポレーションの調査では、小売り事業者の78%が窃盗などの損失を最小化することが重大な課題だと認識しており、76%がこれに対応するテクノロジーへの投資を進めている。特に、カメラやセンサー、画像認識技術、RFIDタグへの注目が高まっているという。
「窃盗などへの対策のコストが商品の値上げにつながることを懸念する買い物客は77%に上る」(ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン 社長の古川正知氏)という調査結果もある。これらの結果はゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンが2025年2月27日に発表した「小売業界のテクノロジー改革に関するグローバル調査」に含まれている。
調査は、北米や欧州、中南米、日本を含むアジア太平洋において、買い物客や小売店の従業員や小売業の経営者など4200人以上を対象にゼブラ・テクノロジーズ・コーポレーションが実施した。今回で17回目の調査となる。
窃盗に備え、商品陳列棚を施錠するなどアナログな対策がとられているが、店員に解錠してもらわなければ商品を手に取れないなどの不便さが買い物客の満足度を低下させる要因になっている。買い物中に店員を見つけるのが難しいという買い物客は70%に上り、従業員を見つけられなかったため欲しいものを買わずに帰った経験があるという人が5人に1人に増えている。
また、多発する窃盗で在庫が把握しにくくなり、「欲しい商品が店頭になかった」という状況にもなりかねない。品切れによる不満を訴える買い物客は減少傾向にあるものの、調査に回答した従業員はリアルタイムな欠品把握に課題を感じているという。
窃盗対策以外にも買い物客の満足度を低下させる要因があるという。買い物体験に満足しているという客は2023年から減少傾向にあり、2023年の85%から今回の調査では実店舗が81%に、オンラインが79%に低下した。
買い物客はオンラインで注文した商品を実店舗で受け取るクリック&コレクトや返品オプションの提供を望んでいるが、小売り事業者側はこうした方法に問題があると感じている。在庫と値段の確認に加えて、実店舗での接客も提供しなければならず、サービスの質が低下している。また、セルフレジレーンの不足を感じる買い物客や、従業員によるサポートが足りていないという声も多い。
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