フィジカルAIで変わるロボットの在り方、ヒューマノイドロボットの衝撃デジタルツイン×産業メタバースの衝撃(9)(5/5 ページ)

» 2026年01月22日 08時00分 公開
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工場や倉庫で実装が進むFigureAIのヒューマノイドロボット

 ヒューマノイドロボットは実証レベルから徐々に実装レベルへと段階が進んでいる状況だ。

 米国のFigureAIはBMWの工場におけるピック&プレースや、物流倉庫におけるソーティング作業などで導入が進んでいる。

 ある自動車メーカーでは、先端的な試験としてヒューマノイドロボットを導入し、工程での評価を行っているという。その中で、製造工場におけるピック&プレース(モノの搬送)の他、電池の組み立て工程(ハーネスなどの取り扱いが従来の産業ロボットでは難しかったがヒューマノイドロボットにおいては可能)、資源循環への対応の中で、回収してきた自動車の分解や処理(さまざまな車種や状態のクルマが回収される中で画一的な自動化ができない)などでは、実用にある程度めどが立ったとする。今後人手が残っていた組み立て工程や、目視検査工程にヒューマノイドロボット導入の検討を図るとのことだ。

photo 図17:FigureAIのBMW製造工場での活用事例[クリックで拡大] 出所:FigureAI
photo 図18:FigureAIのヒューマノイドロボットの物流倉庫での事例[クリックで拡大] 出所:FigureAI

テスラOptimusが描く産業×家庭の用途拡大のシナリオ

 ヒューマノイドロボット普及の最大の課題はコストだが、テスラはこの壁を圧倒的な「量産効果」で突破しようとしている。CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は「将来的に2万〜3万ドル以下までヒューマノイドロボットのコストが下がるだろう」と発言している。テスラが描くロードマップでは、まずは自社工場での活用を皮切りに、2〜3年で工場実装にめどをつける計画だ。特筆すべきは「1万台」という規模での量産を掲げている点である。

 以下がテスラが描くヒューマノイドロボット普及のロードマップだ。

  1. 工場や物流倉庫:閉鎖空間かつ業務が標準化しやすく最初のターゲットとなる。テスラの自社EV(電気自動車)工場、電池工場などで実績を構築する
  2. B2B産業:B2Cと比較して消費者など人とのインタラクションが少なく、業務を標準化しやすいB2B産業向けで実用性を高める
  3. B2C産業:人とのインタラクションが発生するB2C産業に拡大する
  4. 家庭用:市場を家庭用に広げることで、桁違いの量産効果を生み出し、一気にハードウェアコストを下げる
  5. 産業へのフィードバック:下がったコストでさらに産業向けの導入を加速させる

 このように、家庭用まで視野に入れたエコシステム全体でのコストダウン戦略を描いているのだ。一方で、家庭用については導入できた場合に市場規模や台数の広がりは大きいものの、家庭用のデータ学習はプライバシーの論点がある。また、家事は各家庭の部屋などによっても動作が異なるため、標準化が難しいことも論点となるだろう。

photo 図19:テスラ Optimusにおける用途展開[クリックで拡大] 出所:テスラの発表を基に筆者が作成

日本におけるヒューマノイドロボットへの取り組み

 日本においてもヒューマノイドロボットへの取り組みは進んでいる。産業用ロボットやハードウェアは強い日本であるが、AIやソフトウェア側は米国や中国などと比較すると相対的に課題があると見られている。フィジカルAI、ヒューマノイドロボットにおいては競争力を失ってしまうのではないかといった声も聞かれたが、足元では積極的な取り組みも生まれている(中国のヒューマノイドロボットの動向については別の機会で再度紹介したい)。

 例えば、産業ロボットメーカーにおいては、川崎重工業がヒューマノイドロボットのKaleidoを展開し、ロボットにロボットが指示を行い協調するユースケースや、火災現場での救助、庭掃除やごみ捨てなどの日常的な家事での活用が「2025国際ロボット展」でも示されていた。

photo 図20:川崎重工業のKaleido[クリックで拡大] 出所:川崎重工業

 安川電機では、買収した早大発のヒューマノイドロボットのスタートアップである東京ロボティクスを通じて、製造業や物流業、サービス業へのヒューマノイドロボットの導入を進めている。また、川田テクノロジーズはヒューマノイド型の産業用ロボット(双腕ロボット)「NEXTAGEシリーズ」を長く展開している。既に国内100社以上に導入され、電子/電気部品業界や自動車業界、化粧品業界、食品業界などの製造業に幅広く導入されている他、建設現場での活用も進めている。

photo 図21:川田テクノロジーズのヒューマノイドロボット[クリックで拡大] 出所:川田テクノロジーズ

 また、ヒューマノイドロボットを実現するための企業横断でのコンソーシアムも生まれている。京都ヒューマノイドアソシエーション(KyoHA)は、日本発の純国産ヒューマノイド開発を目指し、産学連携でハードウェア技術の結集と産業基盤強化を図る組織として立ち上がり、ルネサスエレクトロニクス、村田製作所、NOK、住友重機械、住友電気工業、日本航空電子工業などが参画している。

photo 図22:京都ヒューマノイドアソシエーション(KyoHA)の参画組織[クリックで拡大] 出所:KyoHA

 2025年12月には、AIとロボット技術の融合によるロボットデータエコシステム構築を目指しAIロボット協会(AIRoA)が立ち上がった。今後は以下のような活動を行う計画だとしている。

  • 産業の垣根を超えたオープンかつ大規模なデータ収集と統合
  • 基盤モデル開発、オープンソース化
  • スケール可能なAIロボットのエコシステムの構築
  • 日本発のスタートアップや研究機関の支援・連携促進
photo 図23:AIロボット協会の今後のアクション[クリックで拡大] 出所:AIロボット協会

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筆者紹介

小宮昌人(こみや まさひと)
d-strategy,inc 代表取締役CEO
東京国際大学 データサイエンス研究所 特任准教授

 デロイトトーマツコンサルティング、野村総合研究所、産業革新投資機構JIC-VGIなどを経て現職。戦略/DX支援企業のd-strategy,incを創業し代表取締役として、生成AIをはじめとするデジタル化や技術変化の中での企業のDX、ソリューションや、AI活用を通じたビジネス創出とオペレーション変革を支援するとともに「生成AI活用伴走プログラム」を展開。加えてコンサルティングファームやSIerなどのプロジェクト支援も実施する。

「生成DX〜生成AIが生んだ新たなビジネスモデル〜」(SBクリエイティブ)

 また、グローバルでのスタートアップエコシステム連携プラットフォームのThird Ecosystem,incの代表取締役CEOとして、企業の国内外スタートアップと連携した新規事業創出や、R&D/新規事業のスケール化の支援、海外/国内のスタートアップエコシステム(VC/CVC/企業/大学/政府機関/スタートアップ)の連携・活性化に取り組む。

 近著に『メタ産業革命〜メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる〜』(日経BP)、『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社)、2024年11月に生成AIの産業活用に関する書籍『生成DX〜生成AIが生んだ新たなビジネスモデル〜』(SBクリエイティブ)を出版。


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