フィジカルAIで変わるロボットの在り方、ヒューマノイドロボットの衝撃デジタルツイン×産業メタバースの衝撃(9)(4/5 ページ)

» 2026年01月22日 08時00分 公開

フレキシブルなロボットの究極系としてのヒューマノイドロボット

 従来、工場や倉庫で稼働するロボットといえば、アームロボットやスカラロボット、パラレルリンクロボットなどが主流であった。これらは、溶接、塗装、ピック&プレースといった特定の工程や動作に基づいて最適化されたハードウェア形状をしていた。

 しかし、AI技術の進化により、ロボットの在り方は大きく変わろうとしている。求められているのは、動作や頭脳が柔軟になり、タスクが変わっても一つのハードウェアで対応できる汎用性だ。そこで注目されているのが「ヒト型(ヒューマノイド)」のハードウェアである。

 なぜヒト型なのか。その理由は、既存の社会や工場の設備が「人間が作業すること」を前提に設計されており、そのインフラを活用できるからだ。人の形状であれば、階段や通路、道具などをそのまま利用でき、幅広い業務に適用できる。

 今描かれているヒューマノイドロボットによる新たな枠組みでは、ハードウェアは「ヒト型」として共通化や量産化し、搭載するアプリケーションや「頭脳」を切り替えることで多様な工程に対応するモデルだ(図14)。あたかもスマートフォンがアプリで機能を変えるように、ロボットもOTA(Over The Air)によるアップデートで進化していく世界観が描かれている。

photo 図14:ヒューマノイドロボットによって描かれる新たなモデル[クリックで拡大] 出所:筆者作成

LLMと模倣学習が鍵を握るロボットの「脳」と「手」の進化

 ヒューマノイドロボットの実用化において、現在進行形で技術的なブレークスルーが進んでいるのが、「頭脳(LLM)」と「手(ハンド)」の領域である。

 「頭脳」については、LLMの搭載により、ロボットが人の曖昧な指示を理解し、周囲の状況を推論して自律的に動作生成を行うことが可能になりつつある。例えば中国のUBTECHは、ヒューマノイドロボットの推論技術に「DeepSeek」などの技術を活用し、AIシステムの構築を進めている。この他、テスラの「Optimus」は自社LLMを活用し、人との対話による作業支援環境などの構築を目指している。

 「手」については、まだまだ技術的なハードルが高い領域だ。さまざまな形状の物体をつかみ、操作(ピック&プレース)する人の手の能力は、実は非常に高い。AIの進化で頭脳の進化にめどが立ちつつある中、現在ロボット開発の最も高いハードルになっているといえる。ハードウェア面での工夫に加え、LLMなどを活用したソフトウェア面での開発が現在進んでいる。テスラのOptimusなども、繊細な物体操作(卵をつかむなど)を重視しており、ヒューマノイドロボットにおいて競争力の源泉は「手」にあるといっても過言ではない。

photo 図15:テスラのOptimusが卵をつかむデモ[クリックで拡大] 出所:テスラ

 人と同じような動作をするヒューマノイドロボットにおいて、頭脳や手の進化において重要になっているのが、熟練の技をコピーする「模倣学習」関連技術だ。

 従来のような複雑で固定的なプログラミングではなく、人の動きをAIに学習させることがヒューマノイドロボットには欠かせない。例えば、UGOはAIロボット向けの模倣学習キットを展開しており、オペレーターの操縦データを収集、学習させることで、熟練者のナレッジをロボットへ効率的に移管する取り組みを進めている。

photo 図16:UGOの模倣学習キット[クリックで拡大] 出所:UGO

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