鉄鋼材料の成形加工法(鋳造、圧延、鍛造)鋼材料の基礎知識(6)(3/3 ページ)

» 2026年01月20日 06時00分 公開
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鍛造

 鍛造は、“プレス機またはハンマーを用いて金属材料を押しつぶし、目的の形状に成形する加工法”です。圧延と同様に、荷重を加えることで材料を塑性変形させ、形を作り出します。成形された材料の断面形状が一様な圧延よりも、立体的に材料を成形することが可能です。

鍛造の効果

 鍛造の「鍛」には「鍛(きた)える」という意味がありますが、その名の通り、材料に打撃を与えることで材料が鍛えられます。多方向から材料を押しつぶすことでもろい鋳造組織を破壊し、微細で整った組織に変えます。

 さらに、材料内部に存在する空洞状の鋳造欠陥を圧着し、強靭な材質に改善します。つまり、鍛造された材料は「鍛錬(たんれん)」されて品質の優れた材料となるため、高い信頼性が求められる部品に鍛造された材料が用いられています。

鍛造の種類

 鍛造の種類は、成形法の違いによって大きく「型鍛造」と「自由鍛造」に分けることができます。

 型鍛造は、金型を用いて素材を押しつぶす鍛造法です。金型から受ける圧力によって素材が鍛錬されると同時に、金型の形状通りに成形されます。ほぼ製品形状に近い形状にまで成形できるため、材料の無駄が少なく、高い歩留まりが得られます。比較的小型の自動車部品や機械部品などを製造する際に用いられます。

図11 型鍛造の概要 図11 型鍛造の概要[クリックで拡大]

 自由鍛造は金型を用いない鍛造法であり、金敷(かなしき/アンビル)と呼ばれる治具の上で素材を押しつぶして形を作ります。刀鍛冶(かじ)が真っ赤な玉鋼を金づちで叩(たた)いて延ばし、刀を作る場面はまさしく自由鍛造です。

 自由鍛造の現場では、素材の端をマニプレータでつかみ、目的の形状になるまで何度も打撃を与えます。ただ素材を延ばすだけでなく、“ねじり”や“曲げ”を加えることも可能です。その他に、素材を軸方向に圧縮する“据込み(すえこみ)鍛造”や、心金(しんがね)と呼ばれる治具を用いた“穴拡(ひろ)げ鍛造”なども行えるため、鍛造はとても自由度が高い成形法です。

 鍛造できる素材のサイズはハンマーやプレス機の能力によりますが、国内では1万4000トン級のプレス機による大型鍛鋼品の製造が行われています。製品としては、特殊鋼製品や工具、大型の機械部品、圧力容器、タービンロータなどが自由鍛造によって製造されています。

図12 自由鍛造の概要 図12 自由鍛造の概要[クリックで拡大]

熱間鍛造と冷間鍛造

 鍛造する温度の違いで見たとき、鍛造は大きく「熱間鍛造」「冷間鍛造」「温間鍛造」に分けることができます。

 熱間鍛造は、金属が再結晶する温度以上に素材を加熱し、鍛造する方法です。鋼の場合は、1100〜1250℃程度に加熱します。加熱することで素材の変形抵抗が小さくなり、低い荷重で素材を変形できるため、効率よく鍛錬することができます。ただし、鍛造後の素材の表面にスケールができるため、機械加工などで除去する必要があります。

 冷間鍛造は、素材を常温で鍛造する方法です。素材を加熱する工程が無いため、エネルギーの使用を抑えることができます。また、素材の表面にスケールができないため、清浄な表面を得ることが可能です。ただし、高炭素鋼や合金鋼のような硬い素材は変形抵抗が大きく、変形しづらいため、適用できる素材は比較的柔らかい材質のものや、小型の素材に限られます。

 温間鍛造は、熱間鍛造と冷間鍛造の中間の温度域に素材を加熱して鍛造する方法です。鋼では、600〜900℃程度に加熱します。加熱によって素材の変形抵抗を小さくでき、なおかつスケールの量も抑えられます。中〜小型の鍛造品の製造にこの鍛造法が用いられますが、大型素材の中心部に鍛錬を効かせたいときにもこの鍛造法が用いられます。

特殊鍛造法

 最後に、特殊な設備を用いた特殊鍛造法について紹介します。

リングローリング

 リングローリングは、リング素材の径を拡げる鍛造法です。自由鍛造などで穴をあけた小径のリング素材に対し、マンドレルとメインロールで挟み、半径方向の肉厚を減少させながら径を拡げていきます。幅方向の肉厚は、アキシャルロールによって制御されます。周方向の機械的性質が良好なリング材を得ることができます。

図13 リングローリングの概要 図13 リングローリングの概要[クリックで拡大]

四面鍛造

 四面鍛造は、上下左右四方向から同時に素材を押しつぶす鍛造法です。自由鍛造に比べて素材の変形効率が高いため、鍛造にかかる時間を短縮できます。ただし、鍛造できる素材は軸物や長尺物の鍛造に限られます。実際に鍛鋼品メーカーや特殊鋼メーカーなどにおいて、高速四面鍛造機による鋼材の生産が行われています。



 以上、鉄鋼材料の成形加工法について説明しました。鋳造、圧延、鍛造の違いや、それぞれの成形加工法のメリットをご理解いただけたなら幸いです。次回は、鉄鋼の組織について説明します。

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筆者紹介

ひろ/ものづくりの解説書

鉄鋼品メーカーに勤務するものづくりエンジニア。入社以来、大型鉄鋼品の技術開発、品質保証、生産管理等の業務に携わってきた。自身が運営するWebサイト「ものづくりの解説書」では、ものづくり業界の魅力を発信する記事や技術解説記事などを公開している。


参考文献:

[1]日本の鋳造と溶解の歴史、日本鋳造協会

[2]新日本製鉄、鉄と鉄鋼がわかる本、日本実業出版社、2004年

[3]分科会活動と技術の進化−圧延工学分科会、ぷらすとす、第1巻、第1号、p.72-77、2018年


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