筆者の経験したODMに関するエピソード【後編】 〜注意すべき認識や判断のズレ〜ODMを活用した製品化で失敗しないためには(18)(2/2 ページ)

» 2026年01月14日 08時00分 公開
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その他の問題点

 検証の目的は、試作セットで問題点を抽出し、設計データを修正して次の試作セットの完成度を上げることにある。しかし、ODMメーカーは1回目の試作セットの試験が全て終わらず、問題点がまだ十分に抽出されていない状況で、金型の作製を開始してしまった。

1回目の試験が全て終わらないうちに、金型を発注してしまった 図2 1回目の試験が全て終わらないうちに、金型を発注してしまった[クリックで拡大]

 金型作製を早めた理由には日程的な都合もあったのだが、ODMメーカーは「2回目の金型部品で組み立てた試作セットで試験するから問題ない」と言うのであった。これでは、1回目の試作の目的が十分に果たされない。結果的には、2回目の試作セットの試験で問題は発生せず、ことなきを得たが、検証は実施すること自体が目的ではなく、問題点を抽出して次の試作セットの完成度を上げることが目的である点を理解しなければならない。

検証の目的は、次の試作セットや量産品の完成度を上げること 図3 検証の目的は、次の試作セットや量産品の完成度を上げること[クリックで拡大]

 筆者が製品化を支援した別の企業でも、同様の事例があった。その企業も前述と同じように、「全ての試験は最終の試作セットで行えばよい」と考えていた。おそらく試験の目的を、「量産に最も近い試作セットで製品の実力を把握すること」と捉えていたのだろう。このときも、検証の目的を丁寧に説明し、理解してもらった。

 また、ODMメーカーから「(筆者が)指摘する問題点が多すぎて設計修正の工数が足りないため、設計修正をしたくない」と言われたこともあった。問題点は多く抽出するほど、最終製品の完成度は高まる。一番危険なのは、「今回の試作セットは完成度が高かったため、問題点が少なかった」と理解してしまうことだ。「問題点が少なかった」は、「問題点を十分に抽出できなかった」と理解する必要がある。ODMメーカーとしては、見積もり時点で想定した設計工数を大きく超える修正は避けたいのだろう。このような場合でも、双方の妥協点を見つけることが重要である。

 検証とはやや異なる話になるが、2回目の試作セットは金型部品で組み立てるため、体裁部品についてはその体裁(ヒケなど)も確認する必要がある。もし金型部品の体裁に問題があれば、成形メーカーや金型メーカーと打ち合わせを行い、修正を依頼しなければならない。しかし、体裁の良しあしは感覚的な判断になることが多く、ODMメーカーだけでは判断が難しい場合も少なくない。この製品では、修正したい箇所が修正されなかったり、満足のいく体裁レベルにならなかったりした。当初から金型に関する打ち合わせへの同席を要望していたが、ODMメーカーから断られていたのだ。

 一般的に、ODMメーカーは自社が使用する部品メーカーを明かすことを断る場合が多い。しかし、ODMメーカーだけでは判断が困難な内容については、立ち合いを認めた方がよい。双方が納得できる製品に仕上げるためである。

反省点

 「試験項目の認識のズレ」に関しては、検証項目一覧を提出する段階で、1回目と2回目の試作で実施する試験項目について、あらかじめ合意を取っておく必要があった。「1回目の試験で合格した項目は、2回目の試験を省略する」といった取り決めを事前に行うべきだったのだ。この製品では、それを明確に伝えていなかったため、ODMメーカーとの認識にズレが生じてしまった。

 「製造性の判断のズレ」に関しては、依頼した修正内容が製品仕様に大きな影響を与えないものであれば、ODMメーカーは発注側の要望に応えた方がよい。設計修正に伴う工数は、あらかじめ見積もりに含めておく必要がある。今回の製品で、仮に逆付け防止のリブがないことによって組み立てミスが発生し、ユーザーのもとで製品が故障した場合、設計修正の費用よりもはるかに高額な修理費が発生する可能性がある。その修理費用の負担は話し合いによって決めるが、ODMを依頼したスタートアップは顧客クレーム対応に多くの工数を割かれることになり、製品や企業イメージも低下する。こうしたコスト損失は、単純な計算では表れにくい。 (連載完)

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筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書

製品化 5つの壁の越え方: 自社オリジナル製品を作るための教科書中国工場トラブル回避術 原因の9割は日本人

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