自動化技術と並んで注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)に関する技術はFA(ファクトリーオートメーション)にとって無視できない流れだ。今回のMECT 2025では、レイアウトの関係で大々的な展示が少なかったが、その一部を紹介する。
工作機械メーカーや制御装置メーカー各社は、積極的にAI技術を取り入れたデータサイエンスに取り組んでいる。その中で、工作機械メーカーと機械要素部品メーカーのコラボレーション展示があったので紹介する。
第1展示館の高松機械工業のブースでは、自動化アプリケーションを中心とした旋盤「XTL-8MYS」の展示の中で、THKと協業した工具監視ソリューションをPRしていた。第3展示館THKブースでは、「OMNI edge」の直動部品予兆検知ソリューションと併せてこの工具監視ソリューションの技術展示をしていた。IoT(モノのインターネット)技術を進化させており、機械故障診断、刃物破損検出などの自動化阻害要因の未然対策技術が期待される。
一連の板金加工機を取りそろえているアマダは、これまでのDXソリューションをさらに進化させたソフトウェア「LIVLOTS」で事務所業務/製造現場支援機能を連携したデジタルツイン技術を展開していた。「AMNC」と呼ばれるオリジナルCNC装置を搭載する自社製品(レーザ加工機、ベンディングマシン、溶接システムなど)の稼働状況を常時見える化し、最適な生産指示を与える板金製缶工場の統合DXツールである。
MECT 2025でもさまざまなメーカーが新技術、新加工技術を提案していたが、特に来場者の関心が高かったと思われる加工技術などを紹介する。
大型切削加工機メーカーの新日本工機は、加工機本体の展示はなく、新たにレーザー溶融肉盛り技術を門型マシニングセンタに付加するAM(積層造形)技術のレーザークラッディング技術を提案していた。
特に、自動車部品用の大型の金型加工において、「削り」と「盛り」の工程集約が可能となり、生産性向上を図っていた。単に、溶接肉盛りだけではなく、特定部分の硬度向上も可能となっている。門型マシニングセンタと一体化した工程集約型システムとして提案していた。
桜井製作所のブースでは、切削加工スピンドルを搭載したロボット加工機「SAKU270F」が注目を集めていた。加工機として高い自由度と汎用性を求めており、ロボット動作指令ではあるが、加工プログラムはCAMとGコードで作成できるのも特徴だ。
加工機ではないが、多くの関心を集めたレニショーの新商品が、国内初披露目というパラレルリンク型3次元測定器「Equator-X」である。その外観は宇宙船と見まがう様相で、圧倒的な高速性を誇っていた。
MECT恒例の最新技術を紹介する主催者企画は、次代を探る新たな加工技術のシーズ/ニーズ調査の有効的な場となっている。今回のテーマは、医工連携の1つである「医療を支える加工術」であった。
キャステムと碌々スマートテクノロジーの医療用鉗子とその金型加工、佐山金型製作所とファナックのマイクロ流路樹脂成形とその金型、メイラと中村留精密工業による難削材加工による整形外科用インプラントが加工実演され、多くの来場者の関心を集めていた。
JIMTOFと比較するとその規模感は小さいながら、MECT 2025は中部圏のモノづくりの活況を物語る展示者数や来場者数であった。地に足の着いた展示商談会だったと言えよう。オークマや芝浦機械では、VR(仮想現実)技術を用いてブース内に大型加工機を出現させる新たな展示法を採用していたことも付け加えておく。
今回訪問できなかったブースも多く、また、スペースの都合もあり、注目された新技術や新商品を全ては紹介できないが、また、別の機会に紹介していきたい。
高桑 俊也(たかくわ としや)
高桑MT技術士事務所 代表
1959年名古屋市生まれ。大学卒業後、工作機械メーカーに入社し、主に工作機械の商品開発、設計業務に従事。機械、制御、ソフトの三位一体設計による機械本体構造、CNC制御技術、加工ソフトウェアを融合させた工作機械開発を実践してきた。定年退職後、技術コンサルタント業を起業し、モノづくりに携わる企業の課題解決に尽力している。加えて現在は、中小企業支援公的機関にて、モノづくり企業の経営相談、技術相談を通じて、販路開拓、価格転嫁、現場改善、社内教育などを支援している。
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