これらの壁を乗り越える解決策としてINSOL-HIGHが提案するのが「業界連携」だ。最先端ロボット、トレーニング環境、高品質データの生成などを単独の企業で全て負担するのは非現実的であり、業界連携することで、コスト分担、ノウハウ共有、共同開発が可能になるという。作成したAIモデルは共同で利用する。この業界連携を進める場として生まれたのがフィジカルデータ生成トレーニングセンターの構想だ。
トレーニングセンター、REAaLプラットフォーム、ヒューマノイドロボットをそろえた上で企業共同運営委員会を作り、多くの業界からの参画を促す。具体的には、物流や製造で共通の普遍的アクションモデルからなる「業界標準モデル」の共同開発、各社特化モデルの高速開発、ロボット導入ノウハウの共有を行う。
プロジェクト体制は、参画企業から構成される運営委員会、事務局としてのINSOL-HIGH、そして技術推進、業務シナリオ、広報などの各部局を作り、共同でロボットをトレーニングする。これにより参画企業は、コストと時間の圧縮、共有資産の即時実装、ノウハウの獲得、競争優位の確立、先行者利益を得ることができるとする。先に参加した企業がより多くのメリットが得られる仕組みも構築する。
第1期の参加企業の募集数は最大10社限定とする。募集締切は2025年12月末で、既に半分の枠は埋まっているという。正式稼働は2026年6月。なお2026年1月からは第2期の募集を行う予定だ。
同イベントでは、野村総合研究所の李氏が「中国におけるヒューマノイドロボット産業と日本の今後」と題した講演で、中国のヒューマノイドロボット産業の最新動向の紹介や日本への提言を行った。この他、ファーストライト・キャピタルの頼氏がファシリテーターを務めたパネルディスカッション「フィジカルAI時代、日本の勝ち筋 現場知とデータが拓くヒューマノイド競争の新戦略」も行われた。
詳細は割愛するが、世界的に進む人手不足や人件費高騰を背景として米中で加速しているヒューマノイドロボット開発の現状が紹介される一方で、日本には製造業で培われた強みが存在しており「今ならまだ現役の職人技をフィジカルAIへ取り込むといったことも可能なのではないか」という意見も出た。他にも、「国ごとに異なる強みがあり、それを反映したヒューマノイドロボット活用の姿も変わるのではないか」という意見もあった。
ヒューマノイドロボットの実用化を早めるためには、高品質なフィジカルデータを大量に迅速に収集することが必須だ。そのためには、従来の製造業の在り方とは異なり、「情報共有できる部分は共有する」という方向にマインドセットを変えることも必要だといった提案も行われた。
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