IIJエンジニアリングとハイテクインターは、衛星通信と光回線による高信頼/低遅延ネットワークを用いた建設機械の遠隔操縦の実証実験デモを報道陣に公開した。
IIJエンジニアリングとハイテクインターは2025年11月21日、東京都内で記者会見を開き、衛星通信と光回線による高信頼/低遅延ネットワークを用いた建設機械の遠隔操縦の実証実験デモンストレーションを報道陣に公開した。
近年、日本の建設業界は深刻な生産年齢人口の減少という課題に直面している。この課題に対し、国土交通省は2024年にDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて建設業界の生産性向上を図る取り組み「i-Construction 2.0」を策定した。
しかし、山間部や都市部から離れた地域の建設現場では、通信インフラの整備が行き届いていないのが現状である。また、実際に遠隔操縦に必要な映像伝送にはネットワークに起因する遅延の影響の最小化が必要であり、限られたネットワーク帯域で多数の映像を効率的に伝送することが求められるなど、遠隔施工の本格的な普及には依然として多くの技術課題が存在している。
これらの背景から今回の実証実験への取り組みが始まった。同実証はIIJエンジニアリングとハイテクインターの他に、実証実験の場所を提供し、専門家による遠隔操作オペレーションを実行する土木研究所と、遠隔操作システムに必要な映像エンコーダーの製造/販売するジツタ中国の4者共同で進めて来た。
今回の実証実験では、場所を選ばず低価格で利用可能なネットワークと、低遅延で効率的に現場映像を送受信できる映像伝送システムを用いて信頼性の高い映像伝送環境を構築し、実際の建機を用いた遠隔操縦の検証に取り組んだ。ハイテクインター 専務取締役 CTOの中島康之氏は「将来的に、人がいっぱい張り付いている現場から、1人のオペレーターが複数の建機を遠隔で管理する世界に移行すべきだと考えている」と語る。
実証実験デモは、茨城県つくば市に構築した「建設DX実験フィールド」とIIJエンジニアリングの本社オフィス(東京都千代田区神田)の間で行った。その距離は約60kmである。
建設DX実験フィールドには、遠隔操作で動かす建機であるバックホウ1台を配置。建機は4台のハイビジョンカメラを搭載し、建機が稼働している現場を俯瞰(ふかん)するためのハイビジョンカメラ1台をフィールド内に設置している。
建機に搭載した4台のハイビジョンカメラの映像は、ジツタ中国のハイビジョンビデオエンコーダー「LVRC-4000」により圧縮。俯瞰カメラと合わせて計5台分のカメラ映像をメッシュWi-Fi、2台の「Starlink Mini」、2種類のフレッツ光回線を介してIIJエンジニアリング本社オフィスとの間で伝送し、同時に本社オフィス側からは、建機操作とカメラコントロール用のデータも送信した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
組み込み開発の記事ランキング
コーナーリンク