MACSを利用したジオポリマーコンクリートは、セメントコンクリートに比べCO2排出量を60%削減できるだけでなく、バイオマス灰を有効に使え、循環型社会の構築などに貢献することから、環境負荷低減性能は高いといえる。
一方、実環境での暴露試験から、MCASを利用したジオポリマーコンクリートは、セメントコンクリートに比べて鉄筋の腐食進行が確認されたが、それ以外の耐久性に関してはセメントコンクリートと同等以上だと分かった。さらに、放射熱の低減効果があることも確認できた。
以上より、MCAS を利用したジオポリマーコンクリートは、現時点で、コストは割高であるが環境負荷低減効果を期待でき、その高機能性を有効活用した製品であれば、十分に普及が図れるものと考えられる。なお、高機能性から考えられる応用製品としては、高い耐酸性特性から下水施設製品、放射熱が低い特性からヒートアイランド対策製品などが挙げられる。
今回、われわれの研究グループは、北九州市で排出された木質バイオマス燃焼灰を資源化システムでリサイクルして、従来コンクリートよりCO2排出量を60%以上削減する超低炭素型コンクリートの製品を開発した。これにより、地域内で循環できる地域循環共生圏構築のロールモデルを実証した(図4)。木質バイオマス発電所は日本全国で稼働しており、それら全ての地域でこのロールモデルを適用すれば、日本の資源循環や建築材料の低炭素化に大きく貢献すると考えている。
これらの活動に関連して、筆者、京都大学大学院 工学研究科 教授の高岡昌輝氏、西松建設 マイスターの原田耕司氏、日本アイリッヒ 技術参与の幸永秀昭氏、響灘エネルギーパーク 所長の眞下剛雄氏らにより進められたプロジェクト「超低炭素型コンクリートを社会実装するための木質バイオマス燃焼灰の資源化技術の実証開発」が、2025年2月5日に「第7回日本オープンイノベーション大賞(主催:内閣府)」の環境大臣賞を受賞した(写真2)。
今後もチーム一丸となって、これらの研究成果の社会実装に邁進する所存である。(連載完)
木質バイオマス燃焼灰改質リサイクルシステムの構築
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