東京大学発のAIスタートアップ企業である燈は、最新テクノロジーを活用して業界特化の業務支援をはじめとした、同社の事業取り組みについて説明した。
燈は2025年10月23日、東京都内で記者会見を開き、事業について説明した。同社は2021年2月に創業した、東京大学大学院工学系研究科 「松尾・岩澤研究室」発のAI(人工知能)スタートアップ企業である。現在は、約360人が会社に在籍しており、平均年齢29.8歳と若い人材を中心とした組織で構成されている。
燈 取締役COO Co-Founderの石川斉彬氏は、「『日本を照らす燈となる』を使命として、これまで事業を展開してきた。テックカンパニーでありながら、古風な良い部分を併せ持ち、昭和的な企業文化を持っている組織でもある。われわれは、AI時代に最先端のテクノロジーで日本産業をアップデートし、世界をけん引する会社を目指している」と語る。
燈は日本最先端の研究開発レベルのAI技術を産業特化のソリューション開発に活用し、企業の生産性の向上に取り組んでいる。建設業界向けサービスの提供から始まり、現在では製造業や物流業などにも事業を展開している。
最先端技術を生かして産業特化のサービスを提供できることが燈の強みである。例えば、1週間前に発表された論文を基にしてプロジェクトの精度を上げるなど、進化が早いAI技術に対応し、独自の研究開発を社内で進めることが可能だ。この高い研究開発力によって生まれた最新のテクノロジーを活用し、モノづくりの各業界ならではのワークフローや専門知識に合わせた、新しい技術開発に取り組んでいる。
現在の燈では、DX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューション事業とAI SaaS(Software as a Service)事業の2つを柱事業として展開している。DXソリューション事業では、顧客要望から2000以上のプランを用意するAI住宅営業ソリューションや、AIを搭載したカメラを取り付けた車両で道路を走ることで道路のひび割れなどの異常を自動で検知してマッピングできるソリューションなどを展開している。
一方AI SaaS事業では、主に業界固有の文化やワークフローに最適化させた生成AIツールをパッケージソフトとして提供している。具体的には、建設業界向け管理業務DXサービスの「Digital Billder」シリーズ、製造業向けAIエージェントサービスの「工/Takumi」など、燈固有のAIモジュールを搭載し、UI/UXを最適に仕上げた業界特化AIサービスを展開している。
「近年では、製造業とのやりとりが増えている。例えば、燈独自のシミュレーション基盤を活用して、工場や建物のデータの3D化を行い、この3Dモデル内で生産ライン配置や人員配置のシミュレーションをしている。実際に稼働しないと分からない部分がシミュレーションで判明し、やり直しなどの余計なコストを抑えることができるソリューションを提供している」(石川氏)。
燈のAI/DXソリューションは「どんなに良いものを作っても、使いこなせなければ意味がない」という考えで技術開発に取り組んでおり、現場で実際に使用してもらって成果を確認し、顧客に喜んでもらう部分までを一気通貫してサポートしている。石川氏は「燈にはカスタマーサクセスチームが存在しており、操作説明に加えてどのように操作したら扱いやすいかという具体的な使い方のサポートをしている。例えば、生成AIの導入時に、業務での使い方が分からない人に向けて、『この業務をする際には、こういう質問文を入力するとこのような回答が出るので、試してみてほしい』といったレベルまで細かい指導をしている」と強調する。
燈は今後、ロボット活用を中心にモノづくり産業のDX/AX(AIトランスフォーメーション)に力を入れていく。そして、モノづくり産業だけではなく、インフラや不動産、金融など社会の根幹を担う分野に事業拡大を予定している。石川氏は「日本を代表するAI会社を目指して、社会問題を解決するソリューションを提供し、"日本の希望の光"になれるように事業を展開していきたい」と述べている。
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