XTIMONでは、基礎的な解析精度の向上に加え、機械学習を活用して特定の製品群ごとに最適化を図った。既存のAI技術を活用した反り解析精度向上/効率化システム「AI-TIMON」をXTIMON向けに改良し、従来比で30%以上の精度改善を達成している。
精度向上の要となるのは、AIとデータ活用によるパラメーター最適化の仕組みだ。機械学習を活用し、過去の解析データと実測データを機械学習させることで、特定の製品群ごとに最適な解析条件を学習モデルが自動提案する。これまで熟練者が経験に基づいて調整していた熱伝達率などのパラメーターも、AIが自動的に最適化するため、解析結果の再現性と精度が大幅に向上した。
熟練者が設定した解析条件をテンプレート化し、チーム内で共有できる「テンプレートシステム」を導入した。解析者ごとのパラメーター調整や試行錯誤を減らし、効率的で再現性の高い解析を実現する。経験の浅いユーザーでも熟練技術者と同等の結果を得られ、技術伝承の効率化にも寄与する。
ユーザーインタフェース(以下、UI)を全面的に刷新し、モデルの表示エリアを15%拡大。メニューをコンパクトに整理し、解析手順に沿って配置した。また、リボンメニュー形式を採用し、解析タイプに応じて必要な機能だけをハイライト表示する仕組みとした。
モデル上でランナーなどの形状の制御点をドラッグ&ドロップで編集できる「マウスドリブンシステム」を新たに搭載した。テンプレート登録した形状を呼び出し、マウス操作のみで微調整してモデルを完成できるなど、直感的な操作性を実現した。
加えて、成形条件の入力画面を一般的な成形機の操作画面と同様の構成にした「成形機ライク入力」機能を追加し、成形機への条件入力を迷わずスムーズに行えるようにした。
さらに、XTIMONの各機能を外部から制御できるAPI(Application Programming Interface)を拡充/公開した。プログラミングの知識を持つユーザーは自作スクリプトからXTIMONを呼び出して解析作業を自動化でき、設定からレポート作成までの一連の作業を完結させることが可能だ。これにより、作業効率を飛躍的に高められる。
「XTIMONのテンプレート機能を活用した場合、3D TIMON 10と比べてクリック数とマウス移動量がいずれも半分以下に削減される。1製品当たりの解析作業におけるクリック数は最大90%削減可能であり、APIによる自動化を組み合わせれば、手作業をほぼゼロにすることもできる」(山川氏)
XTIMONは、既存の3D TIMONユーザーがそのまま環境を引き継げるよう設計されている。従来の解析データやモデル資産を維持しつつ、AI支援と新UIによる効率的なワークフローを実現する。今後は解析領域の拡張やオプションモジュールの追加など、機能バリエーションを順次拡充していく計画である。
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