東レエンジニアリングDソリューションズは、プラスチック製品の設計/生産時に用いる樹脂流動CAEソフトウェアの新製品「XTIMON(クロスタイモン)」を発表した。“次の10年”を見据えた次世代バージョンとして位置付け、3つのコンセプトを基に開発したという。
東レエンジニアリングDソリューションズは2025年10月8日、オンラインで記者説明会を開催し、プラスチック製品の設計/生産時に用いる樹脂流動CAEソフトウェアの新製品「XTIMON(クロスタイモン)」を発表した。
従来製品と比べて解析精度、スピード、操作性を大幅に向上させており、2025年11月から本格販売を開始する。自動車、家電、OA機器などで使用される樹脂部品の設計/生産用途を中心に展開し、2025年度に累計700社、2030年度には累計1000社への導入を目指す。
販売価格は構成により異なるが、おおむね500万〜1000万円の価格帯となる。XTIMONは設計者向けではなく、解析専任者が高度なシミュレーションを行うための本格的なCAEソフトウェアとして位置付けられている。
射出成形は、成形機の中でペレット状の樹脂を溶融し、金型に高速で充填(じゅうてん)して樹脂部品を成形する工程である。この過程では反り変形などの成形不良が発生しやすく、簡単に良品を得ることは難しい。
こうした成形不良を金型製作前の設計段階でシミュレーションにより予測し、発生要因や対策を検討できるのが樹脂流動CAEソフトウェアの役割である。CAEを活用することで、金型修正や成形トライの回数を削減し、開発期間の短縮が図れる。
同社は、1980年代から樹脂流動CAEソフトウェア「3D TIMON」を手掛けてきた。当初は東レ社内の支援ツールとして使用していたが、1990年代に外販を開始し、PC対応や3次元解析機能を実現。2000年代以降は多様な成形法に対応し、外部企業との共同開発を通じて機能を拡充してきた。国産CAEソフトウェアとして40年以上の開発実績を誇り、解析処理のコア部分は完全に内製化して精度向上に努めているという。
素材メーカーのグループ企業としての強みを生かし、樹脂材料に関する専門知識をソフトウェアに反映。材料特性を踏まえた高精度な解析を実現している。また、国内で自社開発を行っているため、日本の製造業ユーザーからの要望に迅速かつ柔軟に対応できる体制を整えている。
3D TIMONは、機能や性能、サポート面で高い評価を得ており、これまでに累計600社、1100ライセンスを販売。自動車、電機/電子、OA機器など幅広い分野で活用されている。
3D TIMONでは、入力できるパラメーターを増やすと解析時間が長くなるため、時間とのバランスを取る目的で、入力項目に制約を設けているという。その結果、シミュレーションと実際の成形結果との間に乖離(かいり)が生じるケースがあった。
このため、解析条件の設定にはユーザーの知見が求められ、反り変形などの成形不良が発生しない結果に至るまで、複数回のトライ&エラーを繰り返す必要があった。不良のない結果を早期に導くには、熟練した経験と高度なノウハウが欠かせなかった。
さらに、ソフトウェアが高い専門性を備えていることから、操作方法を習得し効率的に使いこなすまでに時間を要するという課題もあった。
現行版の「3D TIMON 10」は、2013年に大規模モデル対応を目的としてプラットフォームを刷新。描画速度の向上や使用メモリの削減を実現し、1000万要素規模のプリポスト処理を可能にした。リリースから約10年が経過した現在も基本性能に大きな問題はないが、「次の10年を見据え、さらなる性能/機能向上を図るため大幅なバージョンアップに踏み切った」と、同社 システム技術本部 CAE技術部長の山川耕志郎氏は次世代バージョンの開発経緯を語る。
こうして誕生したのが、XTIMONだ。商品名の“X(クロス)”には、従来の3D TIMONにAIやデータドリブンなど異なる技術領域をクロスオーバーさせ、次世代に向けた変革を生み出すという意味が込められている。
同社はXTIMONの開発に当たり、「圧倒的な解析精度を実現」「誰でも解析熟練者と同じ解析が可能に」「迷わず少ない手数での操作を可能に」という3つのコンセプトを掲げた。
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