設計業務におけるAI活用は「効率化」や「自動化」の段階を越え、設計者の判断や思考の流れに寄り添う存在へと進化しつつあります。2026年は「AIエージェント」と設計者との共創が、現場レベルで少しずつ形になり始める年になるかもしれません。
設計業務におけるAI(人工知能)の存在感は、ビジネス領域における生成AIの浸透にも後押しされ、ここ数年で確実に高まってきました。
近年の設計業務を取り巻く環境は、デジタル化の加速や人材不足への対応、設計プロセスの高度化など、さまざまな課題を抱えながら大きな転換点に差し掛かっています。こうした中でAIをどのように位置付け、どう向き合っていくのかは、設計者にとって避けて通れないテーマになりつつあります。
MONOistが2025年10月7日〜11月3日に実施した「『設計/解析業務におけるAI活用』に関する実態調査 2025」でも、設計/解析業務におけるAI活用に対して「大変興味がある」が41.3%、「やや興味がある」が42.0%という結果になりました。両者を合わせると83.3%に上り、多くの回答者が高い関心を示していることが分かります。
ちなみに、2024年の同調査では合計が78.3%でした。このときは「大変興味がある」(37.6%)よりも「やや興味がある」(40.7%)の割合が高くなっていました。これらの結果から、AI活用への関心は年々高まってきているように思われます。
この傾向は、AIというキーワードそのものへの期待が高まっているというよりも、「設計業務の中でAIがどのように使えるのか」を、より現実的に捉え始めた設計者が増えていることを示しているように感じます。
調査結果を詳しく見ていくと、AIの具体的な活用用途として最も多かったのは「設計作業の支援/アシスト」(58.2%)でした。これに続いて「設計上のミスの軽減」(45.1%)、「解析時間の短縮/高速化」(40.0%)、「設計作業の自動化」(39.5%)、「設計品質のチェック」(35.4%)などが並びます。
これらはいずれも、設計業務の効率化や品質向上に直結する項目です。ただし、アンケート調査のフリー回答も含めて読み解くと、期待の中身は単なる効率化にとどまりません。「抜け漏れを防ぎたい」「過去の事例を踏まえて判断したい」「設計の妥当性を確認したい」といった声が多く見られます。設計者はAIを判断の主体ではなく、自身の判断を支える存在、あるいは判断のための材料を整理/提示してくれる存在として捉えている様子がうかがえます。
一方、設計者が使用するCADツールの進化に目を向けると、AIを活用した機能は既にさまざまな形で実装されつつあります。
例えば、次に実行しそうな操作を提示するコマンド予測、締結部品を自動認識して適切な位置に合致させる機能、自動拘束、スケッチの修正、図面自動化などが挙げられます。こうしたAIによる支援機能が、設計業務における煩雑で反復的な作業を助けてくれています。
ジェネレーティブデザインのように派手さのある機能とは異なり、これらのAI機能は「従来の機能がより便利になった」という感覚に近いものといえます。そのため、AI機能を使っていると意識しないで、「知らないうちにAIを使っていた」というケースも増えていくことでしょう。
特定の機能や作業を便利にするAIではなく、設計に関わるさまざまな情報や前後関係を踏まえながら、より広い範囲に設計者の要求に応え、業務を支援してくれる存在が「AIエージェント」です。これからの設計業務の在り方を大きく変える存在として注目しています。
AIエージェントは、単に指示された命令を実行するだけのツールではありません。設計者から与えられた目的や問いを起点に、その文脈を理解し、必要な情報を収集/整理/分析した上で、自律的に検討すべき点や次に取るべきアクションなどを提示/実行する存在として位置付けることができます。
やりとりは、自然言語による対話がベースとなります。例えば、設計者が「何をしたいか」「何を確認したいか」をテキストなどで伝えると、AIエージェントは設計データや過去事例、各種規制/ルールなどの情報資産を参照し、注意すべきポイントや確認項目、その根拠などを整理して提示してくれます。
さらに、AIエージェントは設計者の判断を起点とし、与えられた目的や条件の範囲で状況を整理/解釈しながら、必要に応じて他のツールやシステムと連携しつつ、タスクを実行したり、資料や画像、3Dモデルといった成果物の作成を支援したりもします。
2026年は、こうしたAIエージェントが「業務の中で使われる存在」へと一歩踏み出す年になる可能性があります。CADをはじめとする設計環境とAIエージェントとの融合は、今後着実に進んでいくものと思われます。
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