新型リーフの走行可能距離702kmに大きく貢献したのは空力の改善だ。モーターやバッテリーはすでに効率が高い水準にあり、のびしろは大きいとはいえない。新型リーフは、空気の流れの理想を追求しながら十分な室内空間を確保したファストバックシルエットだ。ルーフからバックドアにかけてのラインも空力を重視してこだわった。
新型リーフの空気抵抗係数(Cd値)は0.26を達成した。「空力の改善は走行速度が上がるほど効果が出る。時速100kmで走行すると10%の効率改善ができる。モーターであれば10%の改善は難しい」(新型リーフのチーフビークルエンジニアの磯部博樹氏)。
車両サイズは先代モデルと比べて全幅が20mm増、全高が10mm減でほぼ同等だが、全長は120mm短くなっている。新型リーフで十分な室内空間を確保するため、EV専用のプラットフォーム「CMF-EV」の採用によって室内に張り出していたHVACをモータールームに移動させた他、電動パワートレインはモーターとインバーター、減速機が一体の「3in1」で10%の小型化を図った。シート骨格の見直しや、3Dホログラムによるリアランプの薄型化など地道な積み重ねも寄与している。
また、先代モデルと同等のホイールベースでありながら、バッテリー搭載量の多いグレードで75.1kWhに増やせたのは、1つのモジュールを大型化したことが貢献している。バッテリー容量の小さいB5では1種類のモジュールを4つ、床下に並べた。バッテリー容量の大きいB7では、異なるタイプのモジュールを1つ追加し、5つのモジュールを搭載している。
静粛性も先代モデルからさらに磨いた。「EVなら静かだと思われがちだが、エンジン音がなくなったことで、対策しなければいろいろ聞こえてきてしまう。塗装工程や水抜きのための穴にも1カ所ずつ音の侵入を対策するなど、電費と同様に地道に努力してきた」(チーフビークルエンジニアの磯部氏)
次世代の遮音材「音響メタマテリアル」も初採用した。繊維ベースの従来の遮音材は効果がある一方、使用量を増やせばクルマが重くなる。音響メタマテリアルは規則的に同じ図形が並んだ周期構造と、それに重ねるフィルムや不織布からなるシンプルな構造で、空気によって吸音する。一般的な遮音材と同等の遮音性能を確保しながら大幅に軽量化が図れるとして開発を進め、新型リーフのラゲッジフロアボードで初採用となった。
日本の新車市場のEV比率は2%未満で推移している。走行可能距離や充電時間、充電インフラに対する懸念など、「EVを買ってもらえない理由は初代リーフが出たころから変わらない」と新型リーフのチーフマーケティングマネジャーの寺西章氏は振り返る。
新型リーフに乗ってもらうことで魅力を伝えたいという考えの下、販売店以外の場所での展示や試乗の機会を増やしていく。
また、全国の販売店での長年のEV展開で各地にEVユーザーがいる強みを生かして「ご当地オーナーボイス」の発信にも力を入れる。「インターネット上にもEVユーザーの声はあるが、販売店を通して同じ販売店に来る同じ地域に住んでいる人がEVを使いこなしていることを知ってもらえれば、説得力が増す。どこの急速充電を利用すると便利かなど、同じ地域に住む人の声や使い方を共有していきたい。EVが普通のクルマだと思ってもらうことが、EV購入の後押しになる」(寺西氏)
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