表3の計算結果を、ここでは「紙と鉛筆による計算」と呼びます。伝熱界面の温度を固定しているため、比較すべき対象は伝熱界面の熱流束と熱伝達率です。
表4に、熱流束と熱伝達率を示します。熱伝達率はよく一致しましたが、熱流束についてはそこそこの一致にとどまりました。
| 紙と鉛筆 | シミュレーション | ||
|---|---|---|---|
| 熱流束 | W/m2 | 742.2 | 858.4 |
| 熱伝達率 | W/m2.K | 18.554 | 18.550 |
| 表4 紙と鉛筆とシミュレーションの比較:熱流束と熱伝達率 | |||
筆者は、前シリーズ(連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」)および前々シリーズ(連載「CAEと計測技術を使った振動・騒音対策」)において、シミュレーション結果と厳密解は条件がそろえば近似ではなく一致する、という立場をとってきました。しかし、熱流体解析では、そうした立場を取ることが難しい部分があります。
乱流の場合、厳密な解はなく実験値との比較となります。また、“セルサイズを細かくすると実験値に近づく法則”も当てはまらないと考えています。精度を高めるには、問題に適した乱流モデルを選定することが重要です。
次回は、ダクトの断熱材の設計計算Excelシートを作りましょう。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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