さまざまな国でリサイクル原料の囲い込みが進む今、JX金属が対策を講じる。2027年度の稼働を目指し、佐賀関製錬所の前処理設備に約70億円を投じ、低品位E-wasteなどの増集荷にも対応できるようにし、リサイクル原料の処理能力を約5割増強する。
JX金属は2025年9月26日、金属/リサイクル事業におけるリサイクル原料の増処理に向けた前処理プロセスの設備投資を実施することを決定したと発表した。
前処理を要するリサイクル原料が今後増加することが見込まれることから、JX金属製錬の佐賀関製錬所(大分市大字佐賀関)において、キルン炉などの前処理設備の能力を増強する。投資額は約70億円で、処理能力は2025年と比べて約5割増となる見通しだ。稼働は2027年度を予定している。
JX金属は、近年の精鉱製錬における収益性低下に対し、製錬事業の強靭化を加速するため、精鉱製錬の生産規模適正化の検討を含め、高収益なリサイクル製錬への事業構造の転換を企図している。この一環として、鉱石中の硫黄分の酸化熱を用いて溶解を行う環境負荷が少ない製錬法「グリーンハイブリッド製錬」を用いた計画の推進により、銅精鉱の比率を減らしリサイクル原料の比率を高める原料ポートフォリオの見直しを進めている。
一方、金属価格の上昇や資源循環への関心の高まりを背景に、さまざまな国でリサイクル原料の囲い込みが進んでおり、安定的な原料確保が課題となっている。今後もリサイクル原料の増処理を進めるためには、低品位E-waste(使用済みの電気/電子機器廃棄物)などの前処理を要するリサイクル原料の増集荷が必要となることが見込まれる。
このことから、JX金属ではキルン炉をはじめとする前処理プロセスの強化が急務と判断し、今回の設備投資を決定した。
同社のグリーンハイブリッド製錬は、化石燃料の使用量が少なく、投資規模も比較的コンパクトといった特徴があるという。
今回の設備投資により、金属/リサイクル事業の収益性向上とともに、再生可能エネルギーの普及や電動化の拡大を支える銅資源の循環促進にも貢献できると考えている。
また、主にリサイクル原料から回収される貴金属やレアメタルについては、半導体材料事業、情報通信材料事業などの注力事業で具体的な需要があり、回収量の増加はこれら事業のサプライチェーン強化につながる。
これらの金属資源の一部は、産出国からの供給リスクが高まっていることからさまざまな国によって「重要鉱物」と位置付けられており、安定的な確保は社会的にも意義の大きい取り組みであると考えているという。
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