半導体用途研磨フィルムの外観検査工程自動化に向け実証実験開始、AIを活用人工知能ニュース

「人の目では見つけられない小さなキズも、AIなら見抜ける」。そんな技術の開発を目的に、九州工業大学とMipoxは、半導体用途研磨フィルムの外観検査工程を対象としたAI(人工知能)自動化技術の実証実験を開始した。

» 2025年09月24日 08時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 九州工業大学とMipoxは2025年9月18日、半導体用途研磨フィルムの外観検査工程を対象としたAI(人工知能)自動化技術の実証実験を開始したと発表した。

白系の研磨フィルムにおける「色ムラ」の検出精度向上などが課題

 半導体デバイスの高集積化に伴い、シリコンウエハーや光学部品などの製造工程で使用される研磨フィルムの品質保証が重要になっている。従来の外観検査は作業者の目視による判断に大きく依存しており、検査精度のばらつき、作業負荷の増大、労働人口の減少などが課題となっている。これらの課題を解決するため、九州工業大学とMipoxはAI技術による外観検査自動化のための実証試験を開始した。

 両社は2025年3月26日に概念実証(PoC)報告会を開催し、AI技術を用いた外観検査自動化について中間成果を発表した。

 この中間成果によれば、Mipoxが「良品」と判定した半導体用途研磨フィルムの画像データを用いて、九州工業大学が深層学習によりAIモデルを訓練。AIモデルの出力である異常度マップ(Anomaly Map)により異常箇所を可視化し、特定の研磨フィルム(ブルー系、グレー系など)において良品と不良品の100%分類に成功した。

実証施設のイメージ AIに入力した画像(左)と、その結果の異常度マップ(右)。赤丸は人が不良と判断した箇所であり、異常度マップでも白く強調されて異常度が高く示されている[クリックで拡大] 出所:Mipox

 AIモデルの出力に対しては画像処理による後処理を適用。これにより、特定の色系統の研磨フィルムにおいて異常検知性能が改善し、100%の分類精度を達成した。一方で、白系の研磨フィルムにおける「色ムラ」の検出精度向上や、色系統別の異常パターンに対する検知精度のアップ、実製造ラインへの導入と精度評価が今後の課題となった。

 両社は、今後も産学連携を強化し、半導体用途研磨フィルムの外観検査工程を高度に自動化することで、品質保証の信頼性向上、検査工程の効率化、半導体産業全体の生産性強化を目指す。

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