東北大学は、植物由来の生分解性キレート剤と地下のかんらん岩を利用したCO2削減技術を開発した。キレート剤の生分解による金属イオンの放出に伴って、CO2が鉱物に固定する。
東北大学は2025年9月2日、植物由来の生分解性キレート剤とかんらん岩を利用したCO2(二酸化炭素)固定技術を開発したと発表した。
同技術は、金属イオンを捕捉する生分解性キレート剤を含む水(水溶液)を地下に注入し、かんらん岩の孔隙形成(鉱物溶解)と浸透性を改善しつつ、金属イオンを溶かしこんだ流体を地上で回収して鉱物固定に利用する。その後、CO2を溶かしたキレート剤含有水を地下に貯留。最終的に、貯蓄されたCO2は、キレート剤の生分解による金属イオンの放出に伴って、鉱物に固定される。
また、北海道の幌満(ほろまん)岩体から採取したかんらん岩のコアサンプル(直径25mm、長さ25mm)を用いて、流通実験を行った。流体実験におけるスリット実験の結果、生分解性キレート剤水溶液は、かんらん岩からCO2鉱物固定に有効な金属イオンを効率的に溶出させることが分かった。さらに、かんらん岩には複数の鉱物(かんらん石、輝石など)が含まれているものの、最も多く含まれるかんらん石を選択的に溶解し、岩石表面に凹凸が形成されることが判明した。
加えて、流体実験における亀裂実験の結果、岩石コアの上流と下流の差圧(流動抵抗)が生分解性キレート剤水溶液の流通開始後に急激に減少して、その後少し上昇した。この差圧から浸透率(浸透性の指標)を計算すると、最初の20分で浸透率は初期値の21倍に増加したことが明らかになった。
なお、かんらん岩は、日本や世界各地の地表付近に存在している。鉄などの金属イオンを多く含むことからCO2との反応性が高いが、浸透性が低く流体の継続的な注入が困難だった。かんらん岩へCO2を固定する同技術は、CO2を大規模で長期間安定に削減できると期待される。
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