ここまで見てきたように、日本の自動車産業やモノづくり産業を支える金型だが、最新の取り組みを紹介したい。今回事例として取り上げるのは、静岡県湖西市にある協和工業である。協和工業はプレス金型の製造とプレス加工の両方を担い、自動車サプライヤーに供給している。1.5GPaの超ハイテン材の加工を行える技術を持つことが強みだ。
協和工業は、特定の系列に所属せず独自性を貫く。隣にはスズキの湖西工場が広がるが、過去は日産系がメインの顧客であり、最近のメインの顧客はトヨタ紡織グループが多いとのことだ。先述したようにトヨタ自動車もハイテン材や超ハイテン材の活用を進めている。トヨタ紡織グループは多くの部品をトヨタ自動車にも供給しており、必然的にトヨタ紡織グループに部品を供給している協和工業にも技術の高いプレス金型やプレス加工が要求される。
協和工業の金型製作工程は、多くの金型メーカーが金型を製造する方法と大きく異なっている。多くの金型メーカーは通常、以下のような段取りで進めている。
多くの金型メーカーでは、これらのプロセスで金型を製造していくが、寸法公差や幾何(きか)公差は2次元図面上で指定されているため、都度2次元図面を見ながら金型部品の精度を作り込んでいく必要がある。
各寸法や部品の指示は金型設計者にゆだねられているため、設計担当者ごとに微妙に指定する精度が異なったり、部品の仕様が異なったりする。製造(切削)担当者は、図面情報を逸脱した製造はできないため、切削を行う際に図面を何度も確認しなければならない。構成部品は自社だけで製造(調達)できるわけではないため、調達部門からサプライヤーに加工の依頼を行う。もちろんサプライヤーも指示された図面を確認しながら部品を作成する。
本連載を読んでいただいている読者であれば、既に想像できることだろう。このような作業には膨大な付帯作業が発生する。発生する工数は以下のようなものだ。
従来の金型に関するモノづくりプロセスは、統一されたデータがないことでこれらの課題が常に発生している状態にあった。
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