北海道大学は、危険な水素ガスや複雑な圧力制御を用いずに、電界効果移動度約90 cm2/V・sの高性能薄膜トランジスタの作製に成功した。次世代ディスプレイ用薄膜トランジスタの開発を加速する。
北海道大学は2025年8月20日、危険な水素ガスや複雑な圧力制御を用いずに、電界効果移動度約90cm2/V・sの高性能薄膜トランジスタ(TFT)の作製に成功したと発表した。今回の成果を基に、次世代ディスプレイ用薄膜トランジスタの開発を加速する。
研究グループは、水酸化インジウムを原料に採用。水酸化インジウム粉末をタブレット状に圧縮成形し、薄膜作製容器内の真空中で紫外線レーザーを照射して蒸発させ、対向位置の基板上に水素添加酸化インジウム薄膜を成膜した。これにより、従来必要だった複雑な圧力操作を行わずに薄膜中へ水素を導入できた。
水素添加酸化インジウムTFTは、現在主流のIGZO-TFTに比べて約10倍の電界効果移動度が期待される。一方で水素ガス法は、爆発の危険があり安全性が課題だった。研究チームは2024年に非ガス法を示したが、当時は圧力制御が複雑だった。
今回は水酸化インジウム原料の活用で工程を簡素化し、従来法と同等の水素量と特性を確保しつつ、電界効果移動度は約90cm2/V・sを達成した。
今回の成果は、次世代ディスプレイ用薄膜トランジスタの安全かつ簡便な製造法の確立に貢献する。特許を出願し、今後はさらなるデバイス性能の向上と量産化プロセスの検討を進めていく。
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