北海道大学は、パワー半導体パッケージングなどに適した、銅系ナノ接合材料の開発に成功した。低温焼結に対応し、短時間の加熱で高い接合強度を発揮する。
北海道大学は2024年11月27日、パワー半導体パッケージングなどに適した、銅系ナノ接合材料の開発に成功したと発表した。低温焼結に対応し、短時間の加熱で高い接合強度を発揮する。
研究グループはまず、表面が酸化した金属銅粒子や亜酸化銅、酸化銅粒子の混合体を液相還元で処理し、さまざまな銅ナノ粒子の大量合成に成功。その1つとして、金属銅粒子と微酸化銅ナノ粒子を複合化した「コアシェル型銅ナノ粒子」を合成した。
このコアシェル型銅ナノ粒子を遠心分離で固液分離し、ペースト用の溶剤に再分散させ、酸化を抑えながら90wt%を上回る高い銅含有率のペースト生産を達成した。銅系ナノ粒子とコアシェル型ナノ粒子を1バッチ当たり100〜200gスケールで合成可能で、kgスケール以上の量産化にも対応する。
固液分離後、合成したコアシェル型ナノ粒子を電子顕微鏡で確認したところ、コア部分は直径100nm程度の銅ナノ粒子、シェル部分は直径2〜5nmの酸化銅ナノ粒子を確認できた。また、60〜100℃で微酸化銅が金属銅に変わり、結晶構造が相転移した。相転移には、銅原子を拡散させ、低温でも材料と材料が結び付く「ネッキング」という接合をサポートする効果がある。
実験では、150℃で1分程度の加熱でも2〜5nmの酸化銅ナノ粒子が20nm前後に成長することが確認され、コアシェル構造が低温でコアの大きな銅粒子を結合させ、強い接合を形成可能なことが分かった。大きな銅粒子を混合すれば、ペーストの粘度を低下させ、高濃度の導電ペーストを作製可能だ。保護剤の使用量削減にもつながる。
コアシェル型銅ナノ粒子導電ペーストを使って、200℃で1分間加圧焼結したところ、40MPaのせん断強度が得られた。焼結時間を15分にすると、せん断強度は100MPaに到達。この高濃度導電ペーストを200℃で60分間焼結をすれば、体積抵抗率10.7μΩcmの導電膜が得られた。鉛含有はんだは20μΩcm程度のため、半導体デバイスの配線材料としても有望だ。
銅ナノ粒子を使った導電ペーストや接合材料は、低温、短時間、高強度で接合できるため、特に半導体分野における生産コスト低減や小型化、効率性向上への貢献が期待される。
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