北海道大学らは、アルファ型二酸化マンガンの極小ナノ粒子を短時間で合成する手法を開発した。球状形態に近づけ、粒子のアスペクト比を小さくすることで、次世代多価イオン電池の正極特性を改善する。
北海道大学は2025年1月21日、アルファ型二酸化マンガン(α-MnO2)の極小ナノ粒子を短時間で合成する手法を開発したと発表した。東北大学、東京大学、物質・材料研究機構、芝浦工業大学、東京理科大学、カールスルーエ工科大学との共同研究による成果だ。
今回開発した手法は、トンネル構造で従来の合成手法では棒状結晶となるα-MnO2を、長軸方向にのみ選択的に短くし、球状形態に近づけるものだ。粒子のアスペクト比を小さくすることで、次世代多価イオン電池の正極特性の改善を目指している。
研究グループは、従来技術の「水熱法」と独自に開発した「アルコール還元法」とを組み合わせ、常圧かつ高速でのα-MnO2極小ナノ粒子の合成に成功した。具体的には、溶解度の低いアルコールを反応溶液に用い、反応性が高くアルコールに可溶な過マンガン酸塩をマンガン源とし、アンモニウムイオンを溶解させた溶液を熱処理した。アルコールが沸騰する約80℃でα-MnO2極小ナノ粒子が形成される。
合成したナノ粒子のバンドル全体の幅は約4nmで、トンネルの長さは約8nm。水熱法による合成に比べ、アスペクト比は10分の1に低下した。多価イオン電池正極と酸化反応触媒としての特性を評価したところ、特にカルシウムイオン電池の正極に適していることが分かった。
極小ナノ粒子化によって触媒活性の高いエッジ面が増えたことから、有機化合物の酸化反応の触媒活性向上も確認された。
この手法は、アルファ型以外のMnO2においても、極小ナノ粒子化や低アスペクト比化に適用できる。
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