ここまで紹介してきた式による計算結果を、ここでは「紙と鉛筆によるもの」と呼ぶことにします。この計算結果とシミュレーション結果とを比較してみましょう。表2にその内容を示します。
少し補足しますと、シミュレーションソフトは混合平均温度を出力しないため、式10による値を代わりに用いました。また、シミュレーションによる熱伝達率は式14で求めています。
流体解析ソフトでも、主流の温度を基にした熱伝達率を出力できます。パイプの場合、主流の温度はバルク温度となるため、今回は式14を使用しました。表3に、壁温と熱伝達率の比較結果を示します。壁温については良い一致が見られましたが、熱伝達率に関しては「良い線いっている」とまでは言えず、そこそこの一致という結果になりました。後ほど外部流れのシミュレーションを紹介しますが、乱流モデルにSST(Shear Stress Transport)を採用し、Y+が2程度になるように、細かくセルを分割して計算してみようと思います。
次回は、ホローコンダクターを使ったコイルの設計計算Excelシートの作成に取り組んでいきましょう。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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