ソニー・ホンダモビリティの少人数のチームは、充電体験やOTA(無線ネットワークによるアップデート)など車両関連のスクラムと、Webバックエンドやサプライチェーン、MLOps、データ基盤など車両以外のバックエンドスクラム、そして、企画やUX、車両ECUなどに分かれている。それぞれのチームはCI/CDを含む共通のクラウドプラットフォームを活用して、チームで独立してテストやソフトウェアの展開までを行う。「2週間に1度の頻度で動作できるものをどんどん出している」(鈴木氏)
クルマとつながる機能のスクラムでは、モバイル/クルマ/クラウドのインタフェースの合意が必要になる。通常であれば仕様書を用意し、レビューの上で決めていくが、「ソースコードでインタフェースを定義して、そのソースコードをGitHub上でレビューして合意形成を図っている。認識の違いを防ぎ、コードの自動生成につなげれば開発の効率化も図れる」(鈴木氏)
それぞれのスクラムにはDevOpsエンジニアが参加しており、各スクラムの要求を実装や共通プラットフォームに生かしていく体制だ。DevOpsエンジニアはSysOpsのチームのメンバーでもあるため、それぞれのスクラムが独立して動きながらも共通した考え方や仕組みを作ることができているという。
「みんな楽しそうにやっている。ホンダもソニーも大きい会社だが、ソニー・ホンダモビリティは組織的に小さいので判断が早く、仕事がやりやすいという声を聞いている。機動力ではテスラに負けないようにしたい。エンジニア目線で見ると、テスラもソフトウェアを内製していて、やりたいものを作れる環境なのではないか。スピード感に優れていて、ユーザーも新しいソフトウェアを楽しんでいる。AFEELAのユーザーにもそういった面白さを届けたい」(鈴木氏)
AFEELAは、プレミアムブランドにふさわしい質感や品質をベースに運転支援システムによって乗員を時間や空間から解放し、車室内の「感動体験」を提供していくことを目指す。提供する価値は、開発パートナーが参加できるオープンなエコシステムからも作り込んでいく。
AFEELAをモビリティの可能性を探索するプラットフォーム「AFEELA Co-Creation Program」も推進している。ユーザーやクリエイター、デベロッパー、サービス事業者が参加するエコシステムだ。ユーザーがデジタルガジェットとしてAFEELAをいじれる環境も提供していく考えだ。車両データや走行データはクラウドAPI経由でオープンにしていく。
SDVのキラーコンテンツはまだ現れていない。SDVが本領を発揮するのは、自動運転システムで乗員が運転から解放されてからだ。「運転する必要がなくなり、できることが増えたときに過ごし方を提案できるかどうか。体験を大きく変えていきたい。自動運転ができてからが勝負だ」(鈴木氏)
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