Astemoはジャパンモビリティショー2025で、EV向けに資源リスクを低減する新型のレアアースフリーモーターを初公開した。SDV時代に向け電動化と知能化を両立する「システムプロバイダー」への変革を宣言する。
Astemoは2025年10月30日、「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー) 2025」(プレスデー:10月29〜30日、一般公開日:10月31日〜11月9日、東京ビッグサイト)でプレスカンファレンスを開催し、SDV(ソフトウェアデファインドビークル)時代を見据えた同社の戦略と、新型のレアアースフリーモーターなど最新技術を紹介した。
Astemoは2021年1月に、日立オートモティブシステムズなど4社の経営統合により誕生した。2023年には新たにJICキャピタルの資本参加に伴い資本構成を変更。そして、2025年4月1日付でAstemo(旧、日立Astemo)へと商号を変更した。
プレスカンファレンスに登壇した同社 代表取締役社長&CEOの竹内弘平氏は冒頭で、「当社はSDV時代におけるモビリティの“電動化”と“知能化”のリーディングカンパニーを目指し、Astemoブランドの一層の強化を図っていく」と決意を表明した。
今回のJapan Mobility Show 2025で初披露したのは、Astemoが2025年10月27日に発表した、ネオジムなどのレアアース(希土類元素)を使用せず、資源リスクを低減する新型モーターだ。
新型モーターはEV(電気自動車)向けに開発したものだ。ローターコアの形状による磁気抵抗の差を利用して回転力を生み出す「同期リラクタンスモーター」と呼ばれる方式を採用。さらに、磁力を伝える経路を複数の層に分ける「多層フラックス構造」を開発し、電流を適切に制御することで、レアアースであるネオジムを用いた永久磁石が生み出す強力な磁力を補えるという。資源リスクや価格変動が課題となる永久磁石モーターの代替を狙う。
常時使用する主駆動モーター(最大出力180kW)には、レアアースフリーのフェライト磁石を補助的に使用し、パワーアシスト用の副駆動用(同135kW)には磁石を一切使用しない構成としている。これにより、惰行回転時のエネルギーロスを解消し、システム全体の消費電力を抑制するという。
これら2つの同期リラクタンスモーターは2030年ごろの実用化を目指しており、「採用されれば、量産自動車で使える世界初のレアアースフリーモーターとなる」(Astemoの説明員)。
ブースではこのほか、車両周辺の異常を検出する360度3Dセンシング技術や、EVバイク向けの一体型駆動ユニット「e-Axle」などを出展した。
同社は、従来の車両内部の「インカー」領域に加え、クラウドなど車両外部の技術「アウトカー」領域の開発を加速させている。竹石氏は、「Astemoはこれまでのような部品単体ではなく、ハードウェアの機能や制御をソフトウェアで行うSoftware Defined(ソフトウェアデファインド)の考えに基づき、インカーとアウトカーの両領域で価値創造に取り組む」と戦略を述べた。
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