AFEELAではプロダクトやサービスを直接提供するD2C(Direct to Customer)を採用し、モノづくりだけでなく、マーケティングやセールス、カスタマーサービスなどバリューチェーン全体を一から設計し、それを支えるシステムを新たに構築して、車両やユーザーのデータを一元管理する。「売って終わりではなく、むしろ売ってからがスタート」(高倉氏)。パーソナライズされた体験を継続的に提供していく。
ソニー・ホンダモビリティはコアとなるソフトウェアを内製開発することを重視している。クラウドエンジニア、アプリケーションエンジニア、UX(ユーザーエクスペリエンス)メンバー、車載ソフトウェアのエンジニア、プロダクト企画のメンバーが集まり、機能単位でスクラムを分割し、並列開発している。クラウドにはマイクロサービスアーキテクチャを採用している。また、SysOpsチームはアーキテクチャレビューを通す共通プロセスを定義し、インテグレーションテストやセキュリティテストはCI/CDで自動化。プロダクション環境に対して週次でリリースを行っているという。
ソニー・ホンダモビリティは基本となる共通インフラも作っている。全てサーバレスで、アクティブリージョンとパッシブリージョンの二重の構成となっており、障害があれば切り替えられるのが各クラウドサービスに共通の仕組みだ。データベースも常に多重化しているという。それぞれのサービスドメインに求められるSLA(Service Level Agreement)に基づいて構成を決定し、グローバルで1つの共通システムなのか、日本などエリアの中でマルチリージョン化するかなどを判断する。
リアルタイムな双方向通信を実現するため、SDVであるAFEELAとつながるクラウドプラットフォームは車両とクラウドの間はAWS IoTで、コアアプリとクラウドの間はAWS AppSyncを活用している。車両、クラウド、モバイルをシームレスにつなげることで、さまざまなビジネスやアプリケーションを実現する。AWS AppSync Merged APIを採用し、ソースAPIをスクラム単位に分割。小さなチームで並列開発をしながらサービス間の疎結合を実現していく。
運転支援システム「AFEELAインテリジェントドライブ」の開発環境としてもクラウドを活用し、スピード感をもって安心安全な運転支援システムをユーザーに提供するとしている。
テスト車両から収集した走行データはAWS Direct Connectを通じてクラウドストレージのS3に転送し、匿名化やアノテーション処理によって学習データとして整備する。モデル学習を行うSageMaker HyperPodと学習前処理のAmazon EKSを活用してパーセプションやパスプランニングのニューラルネットワーク学習と、Amazon EC2 DL2qを用いた評価、推論を行う。DataOpsとMLOpsをつなぐパイプラインがAWS上に構築され、自動化を実現している。
自動運転を実現する機械学習プラットフォームを含むデータ収集/管理基盤は、車両からデータをアップロードしてさまざまな処理を施してDataLakeに入れるところまでをDataOps、そこから先のモデル学習や評価、推論をMLOpsと分けている。
車両のデータは、AFEELAからAWS IoT Coreを通じて直接アップロードされるものと、通信機能を持たない開発車両からデータを回収してAWS Direct Connectを通じて収集するものに分かれる。そこから、データクレンジングや匿名化、アノテーションなどの処理にかける。収集するデータは1日にペタバイト相当になるため、処理スピードが求められる場合は部分的にAmazon FSx for Lustreを使用する。
DataLakeに集められたデータは、自動運転の機械学習エンジニアが活用するためにデータを可視化し、シーンごとの検索もできるようにしている。自動運転システムが苦手とするシーンを重点的に学習に活用するなどが容易になる。
また、MLOpsでは、AWSの協力の下、SageMaker HyperPodを活用している。冗長化や自動リスタート、自動的なインスタンスの交換などがメリットで、障害が発生しても学習が停止しない。従来は車両やボードを直接使って評価する必要があったが、Amazon EC2 DL2qのクアルコムベースの評価プラットフォームで学習したモデルを評価する。
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