筑波大学と東京大学は、結晶性化合物から加圧のみで水を得る技術を開発した。銅‐クロム/プルシアンブルー類似体に圧力をかけると、温度や湿度を調整しなくても、結晶内部の細孔に保持されていた水分を取り出せる。
筑波大学と東京大学は2025年5月19日、結晶性化合物から加圧のみで水を得る技術を開発したと発表した。温度や湿度を調整することなく、銅-クロム/プルシアンブルー類似体(CuCr PBA)の結晶内部の細孔に保持されていた水分を取り出せる。
PBAは、シアン化物イオン(CN-)と銅、クロムといった金属イオンが規則的に結合した3次元ジャングルジム構造を有する。研究グループは、CuCr PBAの粉末試料に1ギガパスカル(GPa)の圧力を10分間加えると、圧力解放後に試料から水滴が生じることを確認した。
この実験では、13.5mgの試料から平均して3.2mgの水を得られており、1kg当たりに換算すると約240gの水を生産できると考えられる。
加圧前後の結晶構造と電子状態の変化を、赤外分光や放射光を利用したX線吸収/放出分光、X線回折測定で調べたところ、結晶の欠陥部位に存在する水分子と銅イオンの間で起こる部分的な電子移動が判明した。これにより水分子同士の水素結合が弱まり、親水性だった細孔が疎水性へと変化し、結晶内の水分子を結晶外に押し出すことが分かった。CuCr PBAの結晶構造は、圧力印加後も保たれる。
乾燥地域や内陸地域などの水資源問題を解決する手段として、現地で簡便に水を得ることができる「オンサイト水生産技術」が求められている。従来の水生産技術は温度や湿度の差を利用する手法で、自然環境への依存や環境変化を長時間待つ必要があるといった課題があった。
今後は、圧力応答による水生産のメカニズムの研究を進め、効率が良く、耐久性に優れた材料開発を目指す。また、材料の親水性、疎水性を圧力でコントロールする機能を発見した今回の成果は、さまざまな機能性材料の開発に貢献することが期待される。
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