東北大学と筑波大学は、これまで困難だった5nm以下の超微細な金属酸化物粒子を精密に合成する手法を開発した。放射光軟X線分光での解析により、構造歪が誘起する特異な電子状態が確認された。
東北大学と筑波大学は2024年6月4日、5nm以下の超微細な金属酸化物粒子を精密に合成する手法を開発したと発表した。高い反応率で原料を高濃度化でき、連続的な大量合成に対応する。
開発した手法は、超臨界水を反応場とする流通式超臨界水熱合成法を適用したものだ。研究グループは、40ミリ秒〜380秒と短い反応時間で1〜5nmの超微細金属酸化物粒子を制御し、合成に成功した。
続いて、放射光X線回折データを解析し、粒子の大きさに伴う構造変化をシミュレーションしたところ、酸化セリウム(CeO2)の超微細粒子は積層欠陥を有することが判明した。このことから、粒子が融合しつつ高速で成長することで、超微細粒子が形成されることが分かった。
また、放射光軟X線分光による粒子の電子状態と局所構造の解析では、2nm程度のCeO2において酸素の格子位置に乱雑化が見られ、酸素欠損を伴わない構造歪が誘起する特異な電子状態となることが明らかとなった。
金属酸化物は金属よりもナノ粒子の合成が難しく、特に5nm以下の粒子はこれまで合成できていなかった。開発した手法は、CeO2以外の微細な金属酸化物粒子にも適用できる。
また、同研究で確認した、酸素欠損を伴わない構造歪が誘起する特異な電子状態は、超微細粒子に新しい機能を付加する可能性がある。これらの成果は今後、機能性材料の開発や光学材料、磁性材料などへの応用が期待される。
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