急速充電は800Vでも15分かかる。2027〜2028年ごろ、90%まで5分という急速充電技術が市場に出てくると聞いている。全固体電池でなくても半固体電池でも充電時間短縮に効果がある。
固体電池は密度を上げるか、充電時間を短くするか、2つのメリットがある。充電時間の短縮に振っていけばかなりの利便性向上になり、急速充電を避けていたオーナーたちが急速充電を使いに行こうと思える環境になる。マンションなどで自宅充電の環境を用意できない人もEVを使える。充電時間が短くなれば、大容量のバッテリーを搭載する必要もなくなる。バッテリー容量は最大でも50kWhほどになるのではないか。われわれも固体電池に取り組んでおり、実現の早い半固体電池に重点を置いている。
いいものはそのまま使うコンセプトだが、部品を世界各地から調達するのは大変だ。「X in 1」と呼ばれるように、パッケージとして優れたものをそのまま使いたい。取引先の要望で指定があればその部品を使うが、クルマを部品に合わせた方が安くなるという実感がある。
パフォーマンスに優れた駆動用モーターとドライブユニットのセットがあるとして、取り付け位置やステーなどはクルマ側が合わせた方が安い。自動車メーカーの都合で「ここを少しだけ伸ばして」などとやっていくとハウジングが別物になり、コストが上がる。その上、自動車メーカーが事前に言ったボリュームが出ないこともある。優秀な部品を使えるようにクルマをデザインしていきたい。一番いい部品だと確信が持てれば、クルマ側がそれに合わせていく。
鴻海は「MIHコンソーシアム」を通じてEVのソフトウェアやハードウェアのオープンプラットフォームの普及を目指している。一番使いやすいものを標準化して、みんなで使おうというコンセプト。いいものができたら、それに合わせて設計すればEVが安くなる。鴻海は標準づくりに厳しい。MIHでの標準づくりはいったんやり直しているので止まっているように見えるかもしれないが、いくつかの標準を作っている。そのまま使えばハズレにはならないという部品の標準を作り、EVの参入障壁をさらに下げていきたい。
サプライヤーに期待するのは競争力だ。バッテリーやモーターは中国勢が鍛えられている。実戦経験が多く、PDCAがよく回っている。リスクを無視すれば魅力的だ。自国の産業を守る傾向が強まって短期的には守られるかもしれないが、こうした相手から学ばないと言い訳しているだけではどんどん引き離されていく。
中国勢は安くて速い。学ぶ余地は多いが、モノが安くなる根本はスケールメリットだ。なるべく標準化して、同じモノを使っていくというところは、中国勢はできていない。中国勢に追い付くつもりでやっていく。
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