Helical Fusionは現在、高温超電導マグネットの開発を進めている。「当社はヘリカル型核融合炉によるフュージョンエネルギーの商用化を可能にする新技術として、ヘリカル型核融合炉のヘリカルコイルの作製で高温超電導マグネットを採用している」(田口氏)。フュージョンエネルギーとは、軽い原子核を高温/高圧で融合させて重い原子核に変える際に放出される「核融合エネルギー」を指す。
高温超電導マグネットは、電流密度が高いことに加えてヘリカルコイルを細くできるため、ヘリカル装置を小型化しやすく製造コストを減らせる。エネルギー変換装置も格納しやすい。冷却材である液体ヘリウムも不要だ。「従来技術である低温超電導マグネットは電流密度が低い。これにより作製するヘリカルコイルは太くなるためヘリカル装置が大きくなり製造コストが高くなる。冷却材として液体ヘリウムも必要だ。ヘリウムは資源量に制約があり安定供給に課題がある」(田口氏)。
高温超電導マグネットの作製で必要な材料が高温超電導テープ線材だ。高温超電導マグネットは複数の超電導ケーブルから成る。超電導ケーブルは、冷却管、筐体となるアーマー構造、約150個の高温超電導テープ線材を束ねたもので構成される。
田口氏は「今回フジクラから20kmの高温超電導テープ線材を追加調達する。追加分で超電導ケーブルを作製する。この超電導ケーブルに電気を流し、超電導を維持できるかを検証したい」とコメントした。
なお、Helical Fusionは、2026〜2028年にヘリカル型核融合炉の最終実験装置を、2034年に50〜100MWを発電する初号機を、2040年以降に100MW以上を発電できる本格商用発電炉を完成させる見込みだ。田口氏は「最終実験装置は発電を行わない実験炉で超電導ケーブルの作製では200〜300kmの高温超電導テープ線材が必要だとみている。ヘリカル型核融合炉の初号機では3万〜4万kmの高温超電導テープ線材が必要だろう。そのために最終実験装置の開発で成功し、フジクラに高温超電導テープ線材を増産しても大丈夫と思ってもらわなければならない」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.