ヘリカル型核融合炉実現に向け20kmの高温超電導テープ線材を追加調達材料技術(1/3 ページ)

Helical Fusionは、東京都内とオンラインで記者会見を開き、フジクラから高温超電導テープ線材を追加調達すると発表した。

» 2025年04月25日 07時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 ヘリカル型核融合炉の開発を進める国内ベンチャー企業のHelical Fusionは2025年4月18日、東京都内とオンラインで記者会見を開き、フジクラから高温超電導テープ線材を追加調達すると発表した。

ヘリカル型核融合炉開発の背景

 近年、エネルギー需要増加や脱炭素への対応が求められている。こういった問題を解消する手段として注目されているのが核融合発電だ。核融合発電は、超高温かつ高密度の環境に水素同位体を閉じ込めることで生じる核融合反応で発生する大きなエネルギーを発電に活用する次世代型の発電方式となる。

 具体的には三重水素や重水素を超高温かつ超高圧で加熱しプラズマ状態として双方の原子核を衝突させ合体させることで核融合反応を起こし中性子を発生させ、その中性子からブランケットを通して熱エネルギーを抽出し発電に利用する。なお、重水素と三重水素の核融合は同じ質量の石油の燃焼と比べて約1500万倍のエネルギーを創出するとされている。

 Helical Fusionは、核融合研究所や京都大学などの技術基盤を基にヘリカル型核融合炉の開発を進めている。同社は既に小型装置を用いてヘリカル型核融合炉の概念実証を完了している他、大型ヘリカル装置(LHD)によりプラズマ温度1億℃でプラズマ保持時間3000秒以上を達成している。Helical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏は「当社では既にヘリカル型核融合炉の開発で必要なプラズマの実証や炉の設計をほぼ完了している」と話す。

Helical Fusionの位置付け Helical Fusionの位置付け[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion
Helical Fusionの技術成熟度 Helical Fusionの技術成熟度[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion
プラズマ温度1億℃でプラズマ保持時間3000秒以上を達成 プラズマ温度1億℃でプラズマ保持時間3000秒以上を達成[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

 ヘリカル型核融合炉は、ヘリカルコイル、プラズマ、ポロイダルコイルなどから成り、トカマク型と比べてプラズマ性能は劣るものの、プラズマ保持時間が長く恒久的な稼働に適している。さらに、1億℃の水素ガス(プラズマ)を閉じ込めるために複数のらせん状のヘリカルコイルを使うタイプを指す。ヘリカルコイル自身をらせんにすることで、電流が作る磁場を重畳させて磁場を捻(ひね)る。このように、磁場の籠でプラズマを閉じ込める方法を「磁場閉じ込め方式」と呼ぶ。

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